第二十一章 影の在り処



 あまりの展開の早さについていけず、ぽかんと見送る残りの面々に苦笑して、アスはカラゼクの脇に体を入れて支え上げた。

「ハルアは少しなら歩けるよね」

「あ?ああ……」

 ザルマたちの困惑をよそにオッドは歩き出し、その後ろをカラゼクを支えたアスがついていく。どうすることも出来ずについていき、いくつか廊下を折れた先の部屋に怪我人を寝かせてオッドは口を開いた。

「怪我が治るまではこの部屋を使いなさい。その他の者は、この一階の部屋ならどこを使ってくれても構わん。わからないことがあれば、わしかアスラードに聞くといい」

「あの、バーンたちは何を?」

「生きるための一仕事をしてもらっている。来るとは思ったが、まさかこんなにも大所帯だとは思わなかったからの」

「はあ……」

 先手を切って皆の疑問を代弁したザルマだが、オッドの答えは彼女の求めるものとは違っていた。拍子抜けしたように息をもらすザルマに苦笑して、アスが付け足す。

「オッドが皆が来るって言うから、一応食料も用意したんだけどさ。こんなに人数が増えてるとは思わなかったんだ。だから今、畑を広げてるんじゃないかな」

「来るってわかったのは、その……」

 ベッドで半身を起こして聞いていたジャックが言いにくそうにしている言葉を、オッドは苦もなく言い放って告げる。

「賢者だからの。アスラードにも少しばかり手伝ってもらったが、もうろくすると精度が落ちてかなわん」

「アスが?」

 ヴァークの声を皮切りに一斉に視線が集まるのを、居心地が悪そうに受け止めたアスは小さく笑うだけに止まった。

「疑問は多かろうが、今は心と共に体をもここで休めてもらいたい。そなたたちを招いたのは宿屋の真似事をしたいわけではないからね。夕食時にはわしかイークのどちらかが知らせる。それまでは城の中ならどこでも見ておいで」

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