番外編 ちいさな明かり



 そして、髪染めを担当したのが他でもなくバーンだった。過去にも団員の髪を染めたことがある、という実績を買われたわけだが、濃い青色を望んでいたライの希望に叶わず、結果はご覧の通りの淡緑色である。しっかり染まりきらなかった上に、元々の髪色と混じってこのような色になってしまった。

「青系じゃなくて、赤系だったら上手くいった自信はある」

「いいだろ」

 ライは反論しながら髪を指ですく。

「青が良かったんだから」

「……未練っていうか、なんていうか」

 呆れたように言い返すバーンへ、今度はライからつっかかった。

「お前は正体を隠すっていう配慮の欠片もないよな」

「ご心配なく。そう簡単に正体がばれるようじゃ盗賊も生きていけないんでね」

「休業中で何を言ってるんだか」

 言いながら馬に跨った。バーンも馬に乗り、フードを被りながら反論する。

「どうも世間様はまだ、きな臭いからな。お前ら二人だけで渡り歩けるほど、安全にも見えねえからだよ」

 二人を乗せた二頭の馬は、街の裏側を走る路地を抜ける。建物もまばらになり、更に北上を続けると、赤茶けた土しか見えなかった大地に草が点在するようになる。グラミリオンの北部に位置するこの街は、隣接する多民族国家からの雨雲のお陰で、部分的ながら小さな森を持つことが出来ていた。そのために、他の街よりも幾分、豊かな暮らしが出来ているのである。

 ただし、その森もほんの一部でしかなく、そこに至るまではなだらかな平原が延々と続き、時々に牧畜をしている家屋や牛舎が見えるぐらいだった。街ほどの人気は見当たらない。

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