第十五章 岩窟の処女



 埋め込まれている、あるいは岩の一部がこうして顕現しているような印象を受ける。

 苦痛はないのだろうかと考えた時、老婆はふ、と笑った。

「そこにお座り。わたしはまず、そなたに謝らなければならないようだ」

 淡々と響く言葉は素直に体へ染みこむ。老婆の前へ歩み寄り、アスは座った。

「色々と、あったのだろうね。そして今、答えを求めている」

 小さく頷く。

 しかし、アスの予想に反して、老婆は淡々と言葉を綴った。

「だが、残念ながらそなたの求めている賢者はわたしではない。……先に、謝らせておくれ」


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 どうしてると思う、というヴァークの問いにサークは「さあ」と答えた。素っ気ない弟の態度にヴァークは嘆息し、剣を磨くカリーニンに向き直る。

 あてがわれた小屋は土地相応に小さなものだった。狭小さを解消するためだろうか、吹き抜けの高い天井の暗がりに大きな梁が横たわっているのが見えた。高床式の床面は綺麗に磨かれた板材で、剣の光を受けて鈍く反射する。火を扱う場所がないことから、ここでもヴァークらのように外で煮炊きするのだろう。

 里の人間に案内されてからこっち、何の変化もない状況にヴァークはいくらか飽き始めていた。

「賢者に会ったし、あんたはこれからどうするんだ」

「……なに?」

「いやだから、あんたは元々巻き込まれたクチなんだろ。ここでアスが何かの指針を得たら、あんたもそれに同行するつもりなのか」

 自分なら同行する、という決意を固めたヴァークの目を見て、カリーニンは新品同様の剣に視線を転じた。

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