第十四章 葬られた民



 最も、そんな悪知恵は、あの青髪の青年が一言に伏してしまうだろうが。

 自分の息子程度の年齢でしかない彼の頭の切れ方には恐れ入る。国王が彼を側近にした理由もわかる気がした。

 国王が剣なら、ベリオルは静かに敵を射抜く弓矢であろう。

──そうとも、この国を守るのは盾じゃない。

 噂話と嘲笑しか知らない高官に何が出来るもんか、と彼は口許を綻ばせた。それは彼が衛兵としてリファムという国家に身も心も捧げた瞬間から手に入れた、誇りが成せる業だった。

 その時である。何の前触れもなくベリオルの執務室の扉が開けられた。

 謁見が終わったのかと興味半分、責務半分で扉の前に立つ。今度はあの美人の顔をしっかりと目に焼きつけ、仲間に自慢してやろうと思った。

 だが、扉から出てきたのはベリオルただ一人のみであった。

「……あの、客人は」

 常にも増して雰囲気が冴え冴えとしているように見える。元々がこういう雰囲気の持ち主だが、先刻より数段空気が冷え込んでいた。あの客と何かもめたのだろうか、と胃の底が冷える思いで部屋に視線を走らせるが、ベリオルがす、と体をずらして遮る。

 いくらなんでも不躾すぎた、と自身の非礼を恥じて彼はもう一度問うた。

「先刻こちらへ案内した客人は、よろしいのですか?」

 ベリオルが顔の筋肉を少し緩めて笑う。

「大事な客人で、しばらく滞在されるようだから帰りの案内はいい」

「では侍従へ……」

「それもいい。大事な客人と言ったはずだ」

「……失礼しました」

 ここで果たすべき職務がもうないのを悟り、一礼して去ろうとした彼にベリオルが声をかける。

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