第十三章 幾多の夜 一つの朝



 あの異質の力が、刻印が明確になった頃合とほぼ同時期に現れたのには、やはり何らかの関係性を考えざるを得ない。異常と認識した事実を常識で解くことは出来ず、その異常を常識の枠に組み込ませるには同じ、異常──『神子』で解くしか策はなく、そしてそれがアスは嫌だった。

 自らも掴み取れぬ力をどうやって理解しろという。それは論理の中での傲慢に他ならない。

 でも、と少しだけカリーニンを見上げる。返答のないアスを不思議に思ったのか、ちらりと振り返ったカリーニンと目が合った。

「……いいか?」

 静かに聞くカリーニンに、アスは頭を振った。その様子にカリーニンが僅かに驚いたような顔をする。アスは口の動きだけで意志を伝えた。

──「言って」。

 朝靄がのんびりとした動作で晴れ始める。

 そうだ、もう決めたじゃないか。

 眼を閉じていられる時間は、終わったのだと。


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 徐々に輪郭の明らかになってくる無骨な街並みを見ながら、大小三つの人影はその場に立っていた。木陰にいながらも、ひらめく白の制服に色素の薄い髪の毛が目に痛いほど眩しい。血の繋がりを推測するほどに彼らの容姿は酷似しており、一方で、血の繋がりを越えるほどに彼らは似すぎていた。

 そう、彼らは似すぎた。髪の毛の先から指先まで、同じパーツで三人の別人を作ればこうなるであろうという想像通りに、彼らは似ていた。そしてそれを誰よりも憎む少年が、手を強く握り締める。

「……強い反応だったね」

 ひどく冷めた口調は諦めにも似ている。少年はそういう話し方しか出来ない。いつも何かに冷め、何かを諦めては二人に背を向ける。

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