第二章 予言
読める者には真に力があるとされ、その者の扱いは国に委ねられる。予言書もそうだが、それを読む者の国における重要度は高い。群集の中に放り込んで自主申告はありえないだろう。
「一人ずつなのかな?……なら、それを確認する人もいないと」
「俺が王様だったら間近で見たいし……王様は玉座に座るもんだろ。……じゃあ、どういうことだ?」
自分で結論を出しておきながら頭を抱えるライの腕を掴む。
「馬鹿、玉座の間だよ。それなら」
「馬鹿はないだろ」
「だったら気付きなよ。どっち行く?」
左右見渡しても風景に変わりはない。どちらに行っても同じような気もする。
ところが、アスがどちらへ行こうか決めかねている横で、ライはふい、と顔を右側に向けると、淀みない足取りで歩き出した。唐突に離れていくライに驚き、慌ててその後を追う。
「ねえ! こっちなの」
問い掛けるが、ライ自身も訳がわからないという風に頭をかいた。
「いや……多分こっち」
「多分って、なにそれ」
呆れた口調で返す。だが、ライの説明は要領を得ない。
しかし、その背を追いながら、アスはライが本当によくわかていないのだと思い始めた。
うなじがざわつくと言ったかと思いきや、ようやく現れた扉をくぐり、そわそわすると言ったかと思いきや階段を上りだす。
その動きに無駄はなく、まるで城内を知り尽くしているかのようだった。後に続きながら不気味にすら感じる。
徐々に膨らむ得体の知れない不安を振り切るよう、ライに声をかけた。
「大丈夫?」
「全然。平気。ただ何だかなあ……」
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