第二章 予言
「……貨物の搬入口は?」
ひらめいた提案を口にする。ライはにやりと笑った。
「同じ事考えるんだな」
正門を通り過ぎて王城の右手に回り込み、近くの茂みから様子を窺う。そこには食物など生活物資を運び込む小さな門があった。目論見通り、橋は下りて今しがた荷馬車が通ろうかというところである。幌を荷台に被せてはいるが、ともすればすぐに破れ飛んでしまいそうな程に痛んでいた。
不安要素も捨てきれないが、これしかない。
顔を見合わせた二人の考えは一致した。
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上下の激しい振動に危うく舌を噛みそうになりつつ、検分する兵に汗をかきながら城内に入るのはいささか心臓に悪かった。
二人して一生分の緊張を体験し、兵の目を気にしつつ物陰を辿って着いたのは暗い回廊だった。
「……灯りがない」
「警備兵が使う通路かも。ほら」
アスが示す先に何本か槍が立て掛けてある。暗闇の中で鈍い光を放つそれらは、どうにも気味が悪い。
「予言書どこだろう……」
ライは必死に記憶を掘り返す。
号外張りの紙面に、王城の何処という記載はなかった。加えてこの暗闇である。上方に明かり取りの小窓が点在してはいるものの、方向性を見失うには充分だった。
何かを言えば答えが出るかもしれない、という曖昧な希望でもってアスが言葉を発する。
「皆見たいよね、そりゃ」
「でも、博物館みたいな見せ方するかな」
予言書を読める者を見出す、という意味合いも含まれている。予言書に字が現れる時、一種何かの兆候が現れはするもの、字までは浮かび上がってこない。ただ兆候だけを目にして予言書の内容まで図ることは不可能だ。だから、王城はその解読を読める者に託す。何が書いてあるのか、そこで何が告げられているのか確実なものとするために。
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