第十二章 繋ぐべきもの



 加えて、さほど広い部屋でもないものだから、客であるカリーニンとメルケンが対峙して座るだけで部屋は一杯となってしまった。かろうじてサークがカリーニンの隣におさまってはいるものの、アスやジルなど三人は出された茶を片手に、部屋と店の間で立ち尽くす格好となる。そうでなくとも表情の読めないヴァークの機嫌が更に険悪になっていくような気がした。

 秒速で冷え込んでいく空気を背中で感じながら、カリーニンはさっさと用を済ませようと言わんばかりに頷く。

「大剣の方が慣れている。その重さで斬れるぐらいの物であれば尚のこと良い」

「珍しいね、大剣持ちだなんて」

「若い頃から扱い慣れているからな」

「いつから?」

 サークの大きな目がカリーニンを覗き込む。カリーニンは苦笑しながらその頭に手を置いて答えた。

「うんと若い頃だ。いつからなんてもう覚えてない」

「……まあ、向き不向きってのはあるからね。急ぎかい」

「出来るなら今すぐに」

 溜め息ともつかない声をもらし、メルケンはカップを脇に置いて、皺だらけの両手を組む。

「さっきも言ったが今時、大剣持ちなんて珍しくてね。大剣で客を取ったのは三十年前が最後だよ」

「……あんたが打つのか」

「打っちゃ悪いかね」

「……いや別に。無理か?」

「人の話は最後まで聞きな」

 急くカリーニンを一言でねじ伏せる。

「今じゃもう包丁や細身の剣ぐらいしか打てないのが現状だけどね、昔打ったのなら多分そこらへんにあるよ」

 そこらへん、と言いながら、部屋のカリーニンの背後、アスら三人が立つ方向を指差す。

 指先に視線を向けたカリーニンは苦笑気味のジルを見て、メルケンの顔を見た。

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