第十章 足跡



 自分はアスを追いかけるだけでいい。追って糾弾し、斬るのが自分の役目であり皆のためだ。それだけでいい。

 決意はライに確実な拠り所を与え、ライは自分の決断に満足していた。

 ぽつぽつと神官士や特務隊について話をするだけで、結局のところロアーナらが聞きたい部分には一切触れようとしないカラゼクにジャックが尋ねる。その格好からか、雰囲気からか、三人とカラゼクの間には距離があり、ジャックは一番離れて壁に寄りかかっていた。

「特務や神官士についての講釈はありがたいけどな、肝心なところを抜かしてないか」

「何がだ」

「お前の素性だよ。第一、特務改めってのは何だ。そこすっ飛ばして歴史の勉強なんかさせられても聞く耳ねえよ」

「じゃあ、今までの話は全て素通りか」

「ご覧の通り」

 そう言って肩をすくめる。

「生憎、教養がないもんでね」

「そんな人間が特務に入れるとは思えないな。それに、聞く耳がないのなら部屋を出て行けばいい。足はあるんだろう」

「お前と違って走り回って疲れてるもんで。早いところ本題を聞きたいんだ」

 軽い調子で返すジャックに苛立つわけでもなく、淡々と返していたカラゼクは嘆息する。

「それは僕の役目ではない」

「役目え?」

 拍子抜けしたようにジャックは目を丸くしたが、次の瞬間、けらけらと笑い始めた。

「何だよそりゃあ。察してくれだの出てけだの大層なこと言っときながら、役目じゃないって?飼い主の許可がないと動けないってのか。神官士っていうのも楽な仕事じゃねえな」

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