第十章 足跡



 それが神官士だった。

 法力、剣技の能力の高さ、そして執権であるリミオスの推薦があって初めて神官士という名を授けられる。執権による推薦という駄目押しを除けば国軍特務隊と戦力は何ら変わりないだろう。

 一方、特務隊と言えば国軍の精鋭にあたる。戦力の高さは神官士と同じ、何が違うと言えばその活動範囲だろうか。国が大きく軍を動かせない時、彼らに任務が下される。国対国の話し合いの席、使者、その時々によって任務の内容は変わるが、大体にして簡単な外交の場において国の代表として送られることが多い。その分、特権も多数存在するが、比例して危険もついて回る。

 決して穏やかな席上に呼ばれないのが一つだ。穏やかな席上であれば国王や執権、または彼らに準ずる者も存在するのだから彼らが向かう。わざわざ特務に用命する必要はない。

 決裂の恐れのある交渉、または内乱中の国、エルダンテが公式に軍を割く前段階として特務隊に用命が下りるのだ。そのため、法力や剣の腕、更に頭脳までも並以上を要求される。

 軍よりも先に死地に赴く形となる特務隊は決して憧れにはなりえない。国軍の軍服とは一線を画した、神官と同じ白の軍服から「精鋭の掃除係」と呼ばれるのが常で、日向の存在でありながらその扱いはどこか異質だった。

 日向の存在でありながら日陰に追いやられる特務隊、表向きの名目では日向でありながら実質日陰にあるべき神官士、この二つはまさに表裏と言っていい。

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