第六章 その陰を知らず
因縁の関係下で、ただ一人の人間を探すために手を組むなど道理に合わない。
「ここの王はよくわからんからな。王位についてからが短い」
バーンは問うような視線を投げかけた。ああ、と言って答える。
「十年、二十年の治世があれば、その人となりも大体はわかる。ところがここの王は王位について数年しか経っとらん。その割にリファムの成長は目覚しい。だから、図りかねるんだ」
確かに、と一つ頷く。
先王の治世にあってリファムは決して豊かとは言えなかった。貧富の差が激しく、その差が開けば開くほどに犯罪も横行する。自然と街は衰退し、つられるようにして人々の顔からは生気も失われていった。以前に見たリファムとはそんな国だったのだ。
しかし、今はどうだろう。窓の外からは見事に築かれた家々が屋根の海をつくり、その下や中では確かに人の営みがあるのだ。そこに絶対的な差はなく、罪を犯した人間に容赦もない。はがれる漆喰を上から塗りなおすように、リファムは過去の衰退を過去にするではなく、消し去ろうしている。それはそれで骨の折れる作業だとは思うが、徐々に整えられていく街を見るとそう思えた。
そうなるに至る時間のかけ方が、異様に早すぎるというのだ。
本来ならば時間をかけて行うべきところをリファムは矢の勢いで成長している。いつかそれが刃となって返されるのでは、と危惧する声もあり──喜ぶ声もあるのだ。
どちらにせよ国の行く末など自分たちには関係ないと結論づけ、バーンは口を開いた。
「……リファムに利があるんだか何なんだか、はっきりしないから不気味だ」
「そりゃ、早々に仕事を済ませて立ち去るに限るな」
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