10
「くそっ…出て行け!」
「うおっ…!危ねぇっ!悪かったって!」
クリフの笑いに耐えられなくなったアルベルは、手元にあった物を次から次へと投げ付けた。
クリフはかろうじて避けたものの、これ以上怒らせるのはまずいと思い謝るがアルベルの気は治まらず結局部屋から追い出されてしまった。
「少しおちょくり過ぎたか…」
気まずさに頭をポリポリかくと、階段を下りていった。
その音を聞いていたアルベルは、ベッドに潜り込み昨夜の事を思い出す。
「…う…くそっ」
本当はうっすらとだが記憶はある。
自分が何を言ったのか、どんな行動をとったのか…思い出すだけで体が熱くなるほど恥ずかしい。
「しばらく酒はやめておこう…」
そう呟き、アルベルは再び眠りに落ちていった。
一方クリフはフェイト達に出発の延期を相談していた。
「困るんだよ、皆もう行く支度してるのに…」
「そこをなんとか頼む!無理に連れて行っても使い物にならねぇだろ?」
「う〜ん…それもそうだな。アルベルが戦力にならないとさすがに困るね。仕方ないなぁ、じゃあ明日出発。これ以上は延ばせないぞ?」
「あぁ、悪いな」
二日酔いのアルベルを気遣い出発を延ばしてもらったクリフは、部屋に戻ると眠るアルベルの横に座り寝顔を覗き込む。
汗で頬に張り付いた髪をはらうと、昨日のアルベルの言葉を思い出す。
「一人は嫌、か…。親父さんの事でも思い出してたのか?」
クリフはアルベルの耳元に唇を寄せると、そっと囁いた。
「俺がずっと側にいてやるよ」
その言葉がわかったのか、アルベルの寝顔が安心したような表情に変わる。
クリフはアルベルの手を握ると、目覚めるまでずっと側にいた。
『側にいてやる』
その言葉をもう一度言う為に―――。
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