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「捜したぞ!…ったく、一人でうろうろするなよ。危ねぇだろ?」
クリフの言葉に返事はない。
地面を見るのに夢中なアルベルには、クリフの声は届かなかった。
何をそんなに夢中に…と、クリフが後ろから覗くと黒い線のようなものが見える。
もっとよく見ようと身を乗り出すと、アルベルがくるりと振り返り嬉しそうに笑う。
「アリさんアリさん!凄いね、ちゃんと並んでるよ」
「なんだ、アリか…。こんなもん見てて楽しいか?」
「うん!アリさんいっぱいだよ」
しばらく好きにさせといてやろうと思ったクリフだが、気付けば日はもう沈んでいた。
これ以上遅くなるのはさすがに心配かけると思ったので、アルベルの手を取り帰るように促す。
「ほら、帰るぞ。皆待ってるしな」
「やーだー!もっと見るのー!」
「このっ…我が儘言うんじゃねぇよ」
ぐずるアルベルにクリフがイライラしているのがよくわかる。
元々子供の扱いは苦手で、つい口調が荒くなってしまう。
「だって…アリさん…」
「十分見ただろ?…行くぞ」
アルベルの腕を掴むと、力ずくで引きずっていく。
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