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そっとドアを開けると、室内には誰もいなかった。
なんとなく同室のクリフと顔を合わせるのが気まずかったので、アルベルはホッとしてベッドに横になる。
「チョコ…か……。アイツも欲しがったりすんのか…?」
そう呟いた時、階段を上る足音が聞こえた。
大きな音を立てて階段を上るのはあの男。
アルベルは少し緊張した顔でドアが開くのを待つ。
「アルベルいるか!チョコくれ、チョコ!」
勢いよくドアを開けたクリフは、ベッドのアルベルを見つけるとすぐさま駆け寄りチョコレートを要求する。
クリフの手には、クリフと同じくらいの大きな包みがあった。
「いきなりなんだよ…。言っておくがチョコなんてねぇからな」
「マジか?!今日はバレンタインだぞ、オイ!」
「うるせぇな、無いものはないんだよ」
興奮するクリフに驚き、つい冷たくしてしまう。
チョコは用意する事はできなかったが、本心は何か渡してやりたいと思っていた。
しかし結局本心と逆の態度をとってしまい、そんな自分の性格に嫌気がさす。
「冷てぇなぁ。ま、そんな事だろうと思ってたけどよ」
「…え?」
「仕方ねぇ…チョコが無けりゃ作ればいいか」
そう言うとクリフはアルベルをベッドからどかし、持っていた包みを置いた。
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