気になるアイツ
俺とアイツの出会いは最悪だった。
タイネーブとファリンを助けにカルサア修練場に行った時、シェルビーを倒して満身創痍な俺達を上から見下ろしていた。
「弱い者いじめの趣味はねぇ。さっさと失せろ」
そう言ってアイツは俺達を見逃した。
気に入らねぇがあの時は助かったな。
今そいつは仲間として共に戦っている。
最初は嫌な奴だと思ったが、一緒に過ごしてみると意外と気が合うことがわかった。
敵と戦っていても安心して背中をまかせられる。
共に戦ううちに、仲間に対する好意とは別の感情が芽生えていた。
「何ニヤニヤしてんだよ?気持ち悪い」
「ん?あぁ、なんでもねぇよ」
思い出してたら顔がゆるんでいたらしい。
アルベルが嫌そうな顔でこっちを見ていた。
俺から酒場に誘ったのに、たいした話もしないでニヤけていたのが気に入らないようだ。
でもそんな表情もいい、なんて思う俺はおかしいのか?
そう思いながら自分のグラスとアルベルのグラスに酒を注ぐ。
「なぁ、ちょっと聞いていいか?」
「なんだ?くだらない話はするなよ」
「…もし、好きな奴がいて…でも気持ちを伝えることができなかったらどうする?」
「…興味ないな。女とか愛とか、俺には関係ない」
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