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「いや、悪くねぇけどよ…」
「フン、20年近くも待たせやがって…。覚悟はできてるんだろうな?」
「20年…?どういう意味だ?」
「…テメェ、この俺様が覚えててやったのに本人が忘れてるなんていい度胸してんじゃねえか」

クリフはアルベルの言葉に首を傾げ、少し考える。
そしてやっと理解した。

「もしかして…迎えに来るって約束したアレか?」
「やっと思い出したか。言った事には責任持て、阿呆」
「いや、お前が覚えてくれてるとは思わなかったんだよ」
「ほう…なら今すぐ綺麗さっばり忘れてやろうか?」
「じょ…冗談だって!約束通り迎えに来ただろ!」

一方通行の想いだと思っていたものが互いに想い合っていた、という事実にクリフの顔が緩む。
確かに子供時代のアルベルに嫁にするとは言ったが、アルベルの性格上覚えているとは思えなかった。覚えてなくても自分の気持ちを伝えたい…と思いエリクールに来たのだが、意外なことにアルベルは約束を覚えていた。

「何ニヤニヤしてんだよ。気持ち悪ぃ…」
「いや、何でもねぇよ。で?約束覚えて待っててくれたって事は栗のお兄ちゃんのお嫁さんになってくれるのか?」
「…勝手にしろ」
「お前さぁ、もう少し素直になれよ。子供の頃は素直で可愛かったのになぁ」
「一度死ぬか?」
「嘘です。今のままで十分です…」
「わかればいい。あぁ、そういえば飯がまだだったな。一緒に食うか?」
「おっ!いいのか?じゃあ遠慮なくご馳走になるぜ」

二人は空腹を訴える腹を満たす為、階下の食堂へ降りて行く。
クリフは先を歩くアルベルの背に向かい、ボソッと呟いた。

「覚えててくれてありがとな」
「ん?何か言ったか?」
「いや、なんでもない。さ、飯だメシ!」
「…?変な奴」


食事を共にしたクリフは、仕事の為に再び宇宙へと戻って行った。
数日後には帰ってくると約束して―――。


通い夫となったクリフだったが、お互いの気持ちを確認した今では離れていても幸せだった。
アルベルが待っていてくれてると思うと、不安はない。
もっともアルベルは不安なようで、クリフが帰ってくるたびに質問攻めにしていた。

二人の幸せな生活は始まったばかり。
幸せな事も沢山起こるだろう。もしかしたらトラブルも起こる…かもしれない。
それを乗り越えられるかは二人次第。二人にはどんな未来が待っているのだろうか

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