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蘇我は少年ロボットの挨拶を聞くと、立ち上がり部屋から出て行ってしまった。
リビングには不安そうな顔の裸の少年ロボットが残される。



しばらくしてリビングに戻ってきた蘇我の手には服があった。

「さっさと着ろ」
「これ……ぼくの?」
「そうだ。ほら、早くしろ」

インストールされていた挨拶を終えた少年ロボットは、蘇我の希望した幼児レベルの知能になっていた。
それでも蘇我が主人だということはわかるようで、素直に服を着始める。
そんな姿を見ながら蘇我は言った。

「いいか、俺がお前の主人蘇我純也だ。俺の命令は絶対で、逆らう事は許さない。ちゃんと言う事を聞けば大事にしてやる。わかるか?」

蘇我の問い掛けに、少年ロボットはこくんと頷く。

「よし。それじゃあお前に名前をやろう。お前の名前は…蓮だ」
「れ…ん?」
「そうだ。忘れるなよ、蓮」
「ぼく、れん!名前嬉しいの」

蓮と名付けられた少年ロボットは満面の笑みで蘇我に抱き付く。
つられて蘇我にも笑みがこぼれる。
蓮の明るさで、どこか冷たい感じがする部屋の雰囲気が和らぐような気がした。


この日は蘇我にとって特別な日になったが、蓮にとっても大切な、忘れられない日になった。
まだ何も無い、真っ白なメモリーに『主人、蘇我純也』と『蓮』という名前をもらったことが記録された日なのだから。

二人の新しい生活はまだ始まったばかり―――。

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