3
書類を受け取った黒田は後ろに待機していた男から別の鞄を受け取り、そのまま蘇我に引き渡す。
「こちらが取扱説明書になります。かなり厚いのですが、簡易説明書も同梱されておりますので普段はそちらで大丈夫かと思います。それから…今回ご購入いただいたので粗品も同梱させていただきました。ちょっとした玩具ですがお使い下さい」
話を終えた黒田は立ち上がると、これからも遊玩堂をよろしくお願い致します、と挨拶をして部屋をあとにした。
蘇我は座ったまま黒田を見送ると、先程受け取った鞄を開ける。
中には説明通りの分厚い説明書が入っていた。
とりあえず手に取って読んでみるものの、よくわからない。
元々説明書などは読まない性格だった蘇我は、すぐに説明書を放り投げると大きな箱に横たわる少年ロボットへ歩み寄る。
頬を撫でながらふと気付く。
―起動方法がわからない―
蘇我は面倒臭そうにあの分厚い説明書を手にするが、黒田の言葉を思い出し鞄に目をやった。
「確か簡易説明書もあると言っていたな」
鞄をよく見ると確かに薄い冊子がある。
手に取って見ると簡易説明書の文字。
蘇我は早速起動方法のページを開いた。
『商品の起動について
商品は既に起動済みです。強制的に睡眠状態にしてありますが、主人の命令で覚醒するよう設定されております。
尚、最初の挨拶はインストールされているものです。挨拶後はご希望設定の年齢での行動になりますので御安心下さい』
「主人の…命令?」
肝心の言葉が記載されておらず、蘇我は眉をしかめる。
「適当に言ってみるか」
とりあえず試してみようと箱の横に座り少年ロボットに声をかける。
「起きろ」
その言葉に反応したのか、少年ロボットが目を覚ました。
大きな黒い瞳で蘇我を見つめる少年は、自分が収められていた箱から出ると正座をして頭を下げた。
「はじめまして、御主人様。A-I93型です。これからよろしくお願い致します」
[ 3/4 ][*prev] [next#]