Short×2+Story
短編未満とかネタメモとか。



「 黒龍とエンゲージ 」


PLANET:E関連で落書いたやつを。断片的な戦闘シーン書くの好きです

※本編未登場キャラ
※ネタバレ?あり
※殺人・ややグロ表現あり






踊るように繰り出される左右の拳、凶悪な鉤爪を携えたそれが黒服の人間たちをえぐる、貫く、壊す。ぶあ、と飛び散る血液に濡れて、ゆらりゆらりと漆黒の尾を揺らす。積み上がっていく内臓の飛び出た死体たちを横目に、黒い獣は踊りながら笑っている。鼻歌交じりの陽気な様子で人間を確実に肉に変えていく黒い、豹。
――このままでは危険だ。
男の本能がそう告げる。仕事もそうだが、何よりも自分が。突っ込んでくる敵を刀で軽くいなし、がんがんと叩き付けるような音が鳴り響きはじめた己の脳をなだめ、黒龍は声を荒らげた。

「殺すな黒ヒョウ、 貴様、何の為に彼奴らをここまで追い詰めたと思っている……!」

ん?と不思議そうな声。エンゲージは生肉を量産する手を止めないまま首をかしげた。

「最近欲求不満気味な私の為、ではなかったのかねドラゴン?」
「生きたまま捕らえろとの依頼だっただろうが!」
「うん?」
「こンの、俗物、めェ!」

エンゲージに叫びながら、正面から向かってくる敵を槍の柄と掌拳とで沈め、同時に背後に飛び掛っていた男に裏拳を喰らわせ、腹を肘で抉る。地面から伸び足首をつかもうとする手を蹴り上げて振り払い、後ろに回転した勢いでもって暗器を急所をはずして乱れ撃つ。手応え、あり。

人が倒れる音がひっきりなしに続くが、しかしそれでも減らない敵の数。黒龍はちいさく舌打ちをした。うじゃうじゃわいて来る暗殺者集団、対してこちらは二人きりだというのに。一見たおやかな女性にも見える黒龍を侮っているのか、はたまたあの黒猫似非紳士に恐怖を感じたのか、とにかく暗殺者たちはほとんど黒龍に向かってくるようになっている。
そう、ただでさえ苛ついているのに、だ。

「成る程、確かに君は一人も殺していない」

毛並みのよい黒ヒョウのどこか長閑な口調に黒龍の青筋が浮いた。

「わかったなら黙って手を動かせ、愚物がぁあああああああああ!!」
「ふむ、生け捕りとは実に面倒至極」

そんなことは黒龍だって百も承知である。殺してしまえるのならばどんなに楽だろう、そう思いをめぐらせながら、右掌を腹に打ち込み、刀で足を薙いだ。動きと共に揺れる紅い刀彩。ああ面倒くさい。黒龍は眉間に皺を寄せ、吠える。槍を顔面に突き刺して、それらを串団子のように積んで地面に突き刺してしまえるならばどんなに簡単だろうか。どんなに快感だろうか。男は、黒装束からのぞく生白い首に目をやった。

(へし折ってしまいたい)
 
そんな血生臭い妄想に囚われながら、それでも黒龍は踊る。

しかし、気の短い自分はともかく、いつもは軽々と仕事をこなす殺人鬼がこんなに初歩的なミスを犯すとは、と少し気にもなる。ふむ、と紅に彩られた目元を細め、指を唇に当て考え込むような動作をした。その隙にナイフで切りかかってきた暗殺者には足をかけ地面に転がしヒールで踏みつけ固定、そのまま正拳突きを顔面に繰り出し、ぐにゃりと曲がった布の膨らみの中心を見て相手の鼻が折れたことを確認。そのままエンゲージの方に向き直り、

「ああ、イスハーク、今とても君に会いたい会いたい会いたいあいたい」

……本当にただの欲求不満だとは。黒い欲をにじませたテノールを聞き、黒龍は嫌悪に顔をしかめる。あの大鷲の青年を思い起こしているのか、恍惚に耳をぴくぴくと震わせながら、壊れたオルゴールのように言葉を繰り返す獣。

(殺人欲も性欲も同じようなものか)

黒龍はイスハークの人の良い笑みを思い出し、俗物めと吐き捨てた。



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黒龍…純粋種(♂)。見た目だけは美女。
エンゲージ…黒豹のケモノビト(♂)。ぶっとび殺人鬼。
エンゲージさんは登場予定が未来過ぎて人物紹介欄にすらいないという。



13.02.01 22:25  sato91go