Short×2+Story 短編未満とかネタメモとか。 「 ウワアアアアア 」 去年の今頃あたり小説という名のポエムを発掘したので。 ※(管理人は悶えている!) ※でも黒歴史を乗り越えないと人は強くなれないってばっちゃが言ってた! ※これ実は16まであった気がする ![]() 1.回帰 「ぼくにはかえるところなんてないんだ」 口に出すとまるでそれが本当のことのようにナイフの鋭さでもって主を何度も何度も切り付ける。痛い。目を閉じた。 暗い。ひどい、非道い闇だ。 (ほら手を伸ばすな君に触れては不可ない不可ない、僕は仕合わせに為る権利など当の昔に無くしてしまった故) (それでも君は僕に手を伸ばすのだらう嗚呼不可ない不可ない、僕の両手はもう君に触れる権利など当の昔に無くしてしまった故) 再びあの場所に帰ることはないだろう、ただ頑なに白い部屋、赤く染まる両手を持て余しながら僕は考えることを止めた。 2.夢現 夢から覚め、居心地の良い空間から腕を伸ばし、突き刺さる日光に眉を顰め、そして酷く気怠げに息をつく。愛しい子供の流れるような一連の動作を目を細め見守る。いつも悪態ばかりが飛び出してくる唇はぼんやりと可愛らしく開かれていて、黒曜石を煮詰めたような目はうっすら水の膜が張っていて焦点が合わずとろんとしたままだ。 いつ己れが居ることに気付くんだろうナァこの子は、まだ夢現つの間をゆらゆら漂っているその子を見つめながら喉に詰まりかけた息を吐きだす、そんな時決まって己れは少し苦いようなけれど不快ではない柔らかい想いに全身を支配されるのだ。 3.昇華 『暴力を”力”に昇華するには何が必要か。』 どうせ人を殴るのに良心痛まないんでしょキミは、少し刺々しい口調しかしどうしようもなく涙混じりの声でそう呟く。手が震えているのは、涙が止まらないのは、怖いからだ、理不尽さに傷つけられたことが、それ以上に他人を傷つけたことが、酷く怖いからだ。怖くて怖くて目をぎゅっと瞑る。 逃げるな、静かな怒りのような忠告、声が脳に直接響く。逃げるんじゃねぇ、目を開いて全てを見るんだ、お前が守ったもの壊したもの全てを網膜に焼き付けろ、永遠に忘れないように。仮にも『正義』を語る以上それはお前の義務だ、全てを背負って戦って生きること、それが義務だ。少なくとも俺は今までそうして生きてきた、異形の男はふんと鼻を鳴らした。 誰かが誰かを殺さずに済むようにお前は誰かを殴るんだよ、その恐怖に慣れろとは言わねぇ、でもないつまでもそこで止まってんな。重すぎて動けないなら俺を呼べ、どんな重い荷物も二人で仲良く半分コだ、俺たちは運命共同体ってやつなんだからよ。 わかったかこの泣き虫、不器用にでも確かに伝わるぬくもり、言葉、想い。固くて分厚いてのひらがそっと額に触れて離れた。視界がぶれる。 ごめんねありがとう、でももうきっと大丈夫、この涙が止まったらそう言うから伝えるから。だからどうか今は少しだけ。さっきまで切るように冷たかった雫が優しいものになったのはきっと気のせいなんかじゃ。 『――さて、暴力を”力”に昇華するには、一体何が必要か。』 4.幕間 嘘だと思うなら経験してみるがいい、あの重い憂欝を友にたゆたう長い、長い夜を。何か黒くて長いものが喉の辺りでとぐろをまくあの感覚を。 不安で満ち満ちた朝と朝の間の孤独感、アア君にはわからないだろうか。 13.01.20 00:39 sato91go |