レイン・ミーツ・サンライト

※未来設定


色の揃わない自分の双眸を焼く朝日にもしも、と前置き長らく考え続けてきた空想を並べた。
もしも毎朝最初におはようを言えるのが、あるいは言ってくれるのが彼女だったら。それは世界で一番か二番目に幸せなことだと思うのだ。
綺羅、と眠るなまえの薬指に煌めく淡い銀色は絆の象徴ともいえる輪で、しかし力を発揮し役割を全うするのは相手を自分に縛り付けて置きたいときばかり。この人以外には今後の人生で一切靡かない、互いに束縛し合う約束事。やはり起きている彼女に――きざだくさいだと言われても、それらしく跪いて――差し出し、指に嵌め込むべきであったかもしれない。だが喜びと嬉しさのあまりと理由付けした涙を流されでもすれば自分がいる世界が夢ではないかと疑ってしまいそうで。あまり綺麗ではない皺の寄ったシーツが世界最後の夜の残滓。汚れも一緒というのが癪ではあるが、朝を前に立ち去る夜が彼女を置き忘れて行ってくれてよかった、と心から安心する。
じっ、と寝顔に見入っていると閉ざされた瞳を縁取る控えめな睫毛が震えた。朝に弱いはずの俺の方が今日に限って彼女の目覚めを見届けていたことに、先に挨拶を言われてしまったことに――そして左手の薬指にはめ込まれた指輪に。彼女は驚いて、その後すぐにふにゃりといつものように笑ってくれるだろうか。
次に二人で目覚める時、彼女の性が俺と同じ轟になっていれば、それだけで。


やりたかったのは寝ている彼女の薬指にこっそり結婚指輪を嵌め込む少年です。間違えて右手に嵌めてしまうようなへまはしない。多分。

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