レイン・ミーツ・サンライト

多くの人々が入り乱れる日曜の街で、人混みの濁流に幾度も攫われてしまいそうになりながら、私は二色の頭を追いかける。ぱたぱたと、追う人物より小さな一歩で石畳を叩き、踏みしめ、幸い遠目からでも目立つ色に引き剥がされないよう足を動かした。
努力の割には何だかひどく距離が開いてしまっているけれど、これは本当にデートと呼べるのだろうか。今更ながらに考えるが、この人の数だ、並んで歩くことなんでできまい。仕方のないことだ、と嘆息だけで済ませておく。
道の脇に逸れて待っていてくれた轟君の元まで辿り着くと、ようやく息を詰まらせそうな空間から解放された。

「潰されるかと思った……」
「大丈夫か?」

うん、平気、大丈夫。肯定の返事を騒音にかき消されてしまうも、今度はゆったりと歩き出した轟君に続いた。横に並べば一回り大きな左手を差し出されたので自分の右手を乗せてみる。ぎゅっ、とお互い握り合って。その一瞬で足りないものが埋め合わさったかのようにしっくりくる形に、どうしようもなく幸せだ。

「なんか恋人みたいだね」
「恋人だろ」

複雑そうな眼差しを向けてくる轟君に、ごめんね、と笑みを滲ませた声色で返す。
ぱたぱたと早歩き気味の私の足音に、ゆうるりゆうるり意図して遅めたような轟君のそれが重なる。合わせてくれているのだと気づいてしまえば、それだけでも嬉しくなって、絶対に離しませんよとばかりに絡ませた指に力を入れた。

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