クラウディーガールには眩しすぎる

愛情という名の水をあげよう


少女の唇から薄く奏でられる上機嫌な鼻歌の音色。ラジオからテレビから耳を征服しにかかる流行りの曲は明るい歌詞であるだけにネガティブ思考な彼女との不似合い感が否めない。本人とのギャップに耐え切れず、ぷーくすくす、ゴールドはなまえに隠れて笑ってしまった。
小さく空気が揺れるだけでもかき消えてしまいそうな声量で口遊むなまえの腕の中には大事に抱き込まれた桃色のタマゴ。目に見えて嬉しそうにしていること自体少ない上、愛でる対象が生き物と来た。珍しいと言わずして何と言う。
なまえが未だ自分のポケモンというものを持たない人間であったために、ゴールドにとって彼女が何かを大切そうに慈しむ姿は余り慣れたものではない。

「よぉ、タマゴの様子どうなんだ?」

なでこなでこ、と息をしている訳でも無かろう未誕生の生命をかわいがるなまえを真似、自分も頭をぽんぽんと叩くように触ってみようと手を伸ばした。が、しかし、ゴールドの手がタマゴに接触するよりも先にひょいっ、となまえが持ち上げて、かわされる。

「ゴールドはだめ、触っちゃ」
「なんでだよ。ケチくせぇ。オレ様にかかりゃあ孵化なんてちょちょいのちょい、お茶の子さいさいさーい、だぜ?」
「わ、私の力で頑張りたいのっ」

ぱちくり、金の瞳が一瞬止まり、丸く開かれた次には瞬かれた。そしてにったりと意味深に歪む口元。

「ふーん。へぇ〜。ほうほう?」
「な、なに?」
「母性身についたんじゃね? お前」
「よっ、余計なお世話だよ!」

2016/12/07



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