短編

幽鬼なあたしたちでした


「ダイヤモンドはね、」
いつもは短く省略されちゃうオイラの名前をきちんと呼ぶのって、大抵改まらなきゃならないような大事な時だ。だから今回なまえから、例に違わず聞き逃してはいけない言伝てなんかが待っているんじゃないか、って。オイラはつい身構えてしまった。だけれど一大発表なんてものは待ってなどいなかった。
突然口火を切られてびっくりして、次いであまり大切な事情ではなかったことにもびっくりして、目を開く。
「ダイヤモンド――金剛石は、燃やすと消えちゃうんだって」
人名を鉱物の名称に訂正して、一度の区切りを付けてからは少し声音を潜めて、オイラの耳元に息吹くように、秘めておきたかった内緒話を打ち明けるようになまえは伝えた。
「燃えて無くなるってことは有機物なのね。それを知って私ったら少し安心しちゃった」
炎を当てると消えて無くなってしまうらしいものを有機物というみたい、と何となく察してみる。じゃあ退避っぽい無機物っていうものは炎があっても消えないもの、ということでいいのかな。
「だってそれではダイヤの目が人造物や無機物って言っているみたいじゃない。こんなにきらきらしていて、うるうるで、生活力が漲っているのに無機質なんて言いたくないの」
むつかしいことはよくわからないけれども、宝石の名前を冠しているオイラの名前を呼んで、由来になった硝子色の自慢の瞳に笑いかけて貰えるのはとても嬉しかった。


2017/01/23?
2018/03/27 修正

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