ゴールドの姉+シルバーぱちぱち、とフライパンの上で油が躍る音。薄く空気を染める湯気と共に室内に立ち込める、卵の焼けるいい匂い。そして、
「よぉ、シルバー君。よく来たねぇ」
「……どうも」
姉弟でお揃いの金眼を細めて、にかりと曲げた口元から真っ白い歯をのぞかせるなまえ。
何故だろうか。顔立ちも髪色も瞳の色も、性格だって違うのに自分を迎え入れてくれる少女と少年とこの家に安らぎを覚えてしまうのは。何故だろう。
「今さ、あの馬鹿いないんだよ。それでもよかったらくつろいでって」
麦茶でいい? と首だけ回したなまえの向けてくる笑みが、記憶の中で同じように笑っている黄金の双眸を思い起こさせる。彼女と少年は血の繋がりを持った誰より近しい場所にいるのだから、それも当然といえば当然なのだけれど。
それでも性別が違う分、顔立ちも両者を見間違うようなことがない程度には分かれているし、服装のカラーリングセンスは似ていても身につけているものはそれぞれズボンとスカートで、彼等は違う人間だと改めて思う。
似ているようで、似ていない。でもやっぱり、似ていないようで、似ている。
ふとした瞬間に見せる表情、仕草、声色は片割れとぴったり重なる部分があったりするから、そのときばかりは現金にもやはり姉弟なのだとシルバーは頷くのだ。
ことん、と目の前に置かれた二つのグラス。中はどちらも麦茶らしい。
テーブルの上に置いたそばから持ち直し、ごきゅ、ごきゅ、と喉を鳴らしてグラスを空にしてしまったなまえ。それにならってシルバーもまた麦茶を仰ぐ。
「料理中、だったんですか」
「ん? うん。まぁね。でも気にしないでいいよ、そろそろ休もうと思ってたし。シルバー君食べてかない?」
「いえ、今日は……」
「ふーん、そっかぁ。俺の作った飯が食えねぇのか!? なっちって〜」
一人おどけて豪快に笑う。手持ち無沙汰に空っぽのグラスを弄び、からころと氷の転がる軽やかな音色を奏でながら、なまえは。
またにっぱりと笑んで。
「また来なよ。今度はあの馬鹿弟も捕まえとくからさ」
はい、と小声で呟くように答えると、「男の癖して覇気ねぇなぁ! シル公君よぉ!」と痛いくらいにばしばし背中を叩かれた。
空に埋もれる夢を見たいつかに夢見たひだまりの中
2016/12/01
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