その愛、狂ってます-Happy Merry Christmas!2012-2/2

「………………よォ、……………ずいぶん楽しそうじゃねェか、***…」

「あ、はは……………メ、メリークリスマス、ロー…」

「てめェもキリストみてェに磔にしてやろうか、あァ?」

「ま、またまたそんな、あははっ…」


そう乾いた笑いを浮かべてみるも、ローの額の青筋は増していくばかり。


ま、まずい。


ローとのクリスマスパーティーより、合コンを優先したなんてことがバレたら…!!


なにかっ、なにかうまい言い訳を…!!


「おまえがうまい言い訳なんてできるわけねェだろ。」

「なっ、なんでバレっ、」

「おまえのそのぶっさいくなカオに書いてある。」

「ひ、ひどい。」


ローのその辛辣な一言にショックを受けていると、合コンメンバーがざわつき始めた。


「うっそ…!!トラファルガー・ロー!?」

「ホンモノだ!!おれ初めて見た!!」

「めっちゃくちゃカッコいい!!」

「ちょっと***!!どういうことよ!!トラファルガー・ローと知り合いなんて聞いてないわよ!!」

「あ、い、いや、あの、」


ひいいいいい!!


あっ、あんまりローを呼び捨てにしないでえええ!!


「…………………。」


ギロリ、鋭いまなざしで私たちを一瞥すると、ローは私の腕を乱暴に掴んだ。


「行くぞ、***。」

「えっ、ちょっ、ちょっとまってロー…!!」


ぐいぐいと私の手を引いて、ローはここから私ごと立ち去ろうとする。


「なに言ってるのよトラファルガー先生!せっかく***ちゃんに素敵な恋人ができるチャンスかもしれないのに!」


私の反対の腕を、これまたダリアさんが強く引っ張って、私はその豊かな胸にダイブした。


「……………なに言ってやがる、ダリア。離せ。」

「いやよ!トラファルガー先生もいい加減***ちゃん離れして、***ちゃんの恋を応援してあげなきゃ!」

「…………………。」

「ほら、***ちゃん!どの人が好みなの?」


そう言いながら、ダリアさんは合コン参加の男性たちを見回した。


「い、いや、あの、えーと、」

「そういえばさっき『***ちゃんを持ち帰る』って言ってたのは誰かしら?」

「!!」


きっ、聞こえてたんですかダリアさん…!!


意外と地獄耳…!!


「『持ち帰る』…?」


ローの眉が、ピクリと上がった。


「そうなの!さっきちょっと聞こえちゃって!どなたかしら?」

「やっ、やだなダリアさん…!!そっ、そんな話は微塵もっ、」

「美人さん美人さん!この男ですこの男!」


私の言葉をさえぎって、同僚が私のとなりに座っていた男の人を指さした。


よっ、余計なことを…!!


「あら!素敵な人じゃない!どうなの?***ちゃん!」

「あ、いや、そ、そうですね、素敵です、」

「ほら、トラファルガー先生!大切な幼なじみの恋人候補よ!」

「…………………。」


ダリアさんがそう言うと、ローは殺人的な恐ろしい目でその男性を見た。


もはやその男性は震えあがっていて、そんなつもりはもう毛頭ないと悟る。


なんとかしてお茶を濁そうとした、


その時、


「…………………いいんじゃねェか。」

「……………へ?」

「だから、いいんじゃねェか、持ち帰られれば。」

「…………………。」


そ、そんな。


衝撃的なローのその言葉に、私は思わず呆然とする。


そりゃあ、ローはいつも私に男つくれって言ってるし、私はただの幼なじみだし、


……………ローにはダリアさんがいるし。


そう思われても当たり前なんだろうけど…


でも…


正直、ちょっときつい…


ついそんな感情が表に出てしまいそうで、私は深く俯いた。


「……………ただし、」

「?」

「おれも行く。」

「…………………………へ?」


その声が、そこにいた全員とかぶる。


へ、い、いまなんて?


「だから、おれも行く。」

「な、なぜ?」

「おまえ行くんだろ。だからおれも行く。」

「い、いや、そんなはっきり言い切られても、」

「なんだよ、不満か。」

「ふ、不満というか…」


それ以前の問題なんですけど…!


「ひとつ言っとくが、」


そう言って、ローはその男性に目を向けた。


「こいつには、もれなくおれが付いてくるからな。」

「へ、」

「万が一付き合ったとしても二人で出かけるなんてことはまずないと思え。」

「い、いやいや、ロー、ちょっと、」

「旅行なんて行こうもんなら、おれと***が同室、おまえは一人だ。」

「ど、どう考えてもおかしくないかな、それ、」

「なにをしようとどこに行こうと、必ずおれの監視が付きまとう。……………いいな?」


ローがより一層、鋭いまなざしを向けると、ついにその男性は、ひっ、と小さな声を上げてしまった。


「おっ、おれっ…!!そっ、そんなこと言ってないっす…!!その人の聞きまちがいですよ…!!」

「ほう、……………じゃあ持ち帰りはなしだな。」

「もちっ、もちろん…!!」


その男性の言葉を聞くと、ローは満足げに口の端を上げてダリアさんを見た。


「……………だ、そうだ。」

「……………あなたって人は…」


そんなローに、ダリアさんとシャチくんは深い溜め息をついて、ペンギンさんは楽しげに声を上げて笑っている。


「行くぞ、***。」

「わっ、ちょ、ちょっとロー…!!」


先ほどよりも強い力でローは私の手を引くと、奥にあるVIPルームの方へと歩いていった。


―…‥


「す、すごいね、高いお店なのにVIPルームなんて…」


いつものメンバーで賑わっている室内を見て、私は感嘆の声を上げる。


「話そらしてんじゃねェよ。」

「あ、は、はい。ごめんなさい。」


そんな楽しげな雰囲気のなか、私はこんなにも広い室内の中心に座らされ、ローによる尋問を受けていた。


助け舟はもちろんない。


「おれより合コンを取るなんて、いい根性してんじゃねェか。あァ?」

「も、もちろん途中で抜けて、そっちに行こうとしたんだよ。」

「来なかったじゃねェか。」

「そ、それは、」

「あげく初めて会った男に持ち帰られる気満々だったとはな。」

「ま、満々なんて言ってな、」

「あんなただヤりてェだけの男に捕まりやがって。」

「で、でもロー、いつも『いいと思ったらヤってみろ』って、」

「あ?」

「へ?」


私のその言葉に、ローはなぜか怪訝に眉を寄せた。


「おまえ、……………あの男、いいと思ったのか。」

「へ、」

「どうなんだよ。」

「あ、い、いや、別にそういう意味じゃ…」

「…………………。」

「ロ、ロー?」


ローは、グラスを取ると、いっきにその中身を煽る。


イライラしているときの、ローのくせだ。


「そういや、」

「え?」

「あの男、中学の時おまえがよく一緒にいた男に似てんな。」

「へ?ちゅ、中学の時?」


………………………。


……………だれ?


「いただろ。となりのとなりに住んでるとかで、よく一緒に帰ってた男。」

「よ、よく覚えて、……………あ!そういえば!」


田中くんのことだ!


そう言われてみれば、さっきの人と少し雰囲気似てる…


「懐かしいなー、そういえばいたね。」

「…………………。」

「でもたしか、突然学校来なくなっちゃったんだよね、田中くん。」

「…………………。」

「その後すぐに家も引っ越しちゃったし、……………いったいどうしたんだろ。」

「…………………。」

「あ、あれ、でも、……………ロー、どうして田中くんがとなりのとなりに住んでること知って…」

「…………………。」

「…………………。」

「…………………どうしてだと思う。」


そう言って、ローの口元は綺麗な弧を描いた。


「…………………。」

「…………………。」

「…………………ま、まいっか!そんな昔のこと!あははっ…」

「そうだな。問題はさっきの男のことだ。」

「いっ、いやいやいやいや!!さっきの人のことももういいよ!!大丈夫大丈夫!!」


私は新たな犠牲者が生まれることを恐れて、慌ててその話題を拒否した。


田中くん!!


あなたの安否はいったい!!


田中くんの安否に頭を巡らせていると、ふと、手首に感じる冷たい感覚。


シャラリと、綺麗な石が揺れた。


「!!……………ロ、ロー…!これっ、」

「やる。」

「なっ、なんでっ、」

「おまえ、今日それ聞くか。」

「でっ、でもっ、」

「うるせェ、いいから黙って受け取れ。」

「ロ、ロー…」


改めてそれに目をやると、いつだったか、私がお店のガラス越しに見つめていたブレスレット。


とてもじゃないけど手が出ない値段だったから、すぐにあきらめたんだっけ。


その日はたしか、ローとそこで待ち合わせしてた。


「こ、こんな高価なもの、本当にいいのかな、」

「しつこいんだよ、おまえは。」

「……………あ、ありがとう、ロー。」

「…………………。」

「うれしい…」


そう言いながらそのブレスレットに見とれていると、ローが視界の端で柔らかく笑うのが見えた。


高価なものだから、うれしいんじゃない。


ローが、私のことをちゃんと見てくれている。


それが、とてもうれしかった。


「あ、で、でもロー、ご、ごめん、私、会えるかどうか定かじゃなかったから、プレゼント用意してな、」

「もうもらった。」

「……………へ、」


も、もうもらった?


な、なんにもあげてないんだけど…


「おれは、……………おまえがいれば、それでいい。」

「え、……………えっ、」


いっ、いまっ、……………なんて…!!


ローはブレスレットを付けた私の手首をそっと持ち上げた。


体温の低いローの手が気持ちよく感じるほど、身体が熱くなっている。


「言っとくが***、『これ』はアクセサリーじゃねェ。」

「え、」

「これは、手錠だ。……………おまえがおれから逃げられねェようにするためのな。」

「っ、」

「***、」


ローは、私の手首を自分の口元へ引き寄せると、ブレスレットにキスをした。


「クリスマスだろうがなんだろうが、おまえはいつでもおれのもんだ。」



その愛、ってます



『は?中学の時転校した田中?たしか父親が突然海外に転勤になって、今はそこで元気に暮らしてるって聞いたわよ。』


ほっ、ほんとに!?そっか!!無事でよかった…!!



『?』


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