その愛、狂ってます-Happy Merry Christmas!2012-1/2

赤と緑のかわいらしい装飾に彩られた店内は、いつもより賑やかさを増していることだろう。


となりのテーブルでは、ご機嫌がよくなった上司らしき人が、サンタクロースの恰好なんてしちゃっていて、今年もこの日がやってきたんだなと実感する。


今日は、クリスマス。


クリスマスは、毎年恒例の、シャチくん主催『クリスマスパーティー』に出席する。


ローも、年末は忙しいから時間どおりには来られないけど、何時になっても必ずカオを出してくれるから、毎年会うことができていた。


もちろん、私は今年もそのパーティーに参加す、


……………るはずだったのだが…


「ほらほら***ちゃん!なにもの思いに耽ってるの!お酒進んでないんじゃない?」

「あっ、いやっ、大丈夫です!頂いてます!」

「もう!合コン始まってからもう2時間は経ってるんだよ?そろそろ他人行儀はやめやめ!」

「あ、はは…そうですね!じゃなくて、そうだね!」


空気を読むんだ、***!


ここでは人見知りな自分を捨てなきゃ!


そう自分を奮い立たせると、私はグラスに注がれたお酒をすべて空にした。


そうです。


お気付きのとおり、私はなぜか合コンに参加しております。


『***!クリスマスは女同士で楽しむわよ!』


そんな誘い文句で同僚に誘われたのは、今月の始め頃。


先約があると、誘われるたびに告げていたのだが、


『ちょっとくらいいいじゃない!なによ、あんたも男できたの?ひどいわ皆私を置き去りにして!うわあああん!』


なーんて会社で泣かれては(ちなみにうそ泣きだった)誘いに応じないわけにはいかない。


『今年は9時くらいからの参加になりそうです。ごめんね。』と、シャチくんと、一応ロー(シャチくんだけに連絡すると怒るから)にメールをして、その内容のとおり、途中から参加するはずだった。


時計を見ると、もう23時を回っている。


多分、そろそろローとダリアさんが合流する頃かな…


お医者さんは年末特に忙しいから、毎年なかなか時間どおりには来られないんだよね。


合コンも楽しいけど…


……………やっぱり、ローに会いたかったな…


この楽しげな空気を壊すわけにもいかず『ごめん、今年は行けそうもないや。楽しんでね。』メールを送ったのが3時間前。


あの意地悪く笑う幼なじみの憎たらしいカオを思い浮かべて、私は小さく溜め息をついてしまった。


ダメダメ!せっかく来たんだから楽しまなきゃ!


そう思い直して、私は再び目の前で繰り広げられている会話へ意識を戻した。


「でもさァ、皆こんなにかわいいのに恋人がいないなんておかしいよなァ!」


この合コンを一番盛り上げてくれている男性が、私たちのカオを見ながら怪訝に眉を寄せる。


「ほんとはいるんじゃないのォ?」

「えー、ほんとにいませんってばー!」

「ほんとにィ?」

「じゃなかったらクリスマスに合コンなんてきてませんよ!ねっ!***!」

「えっ、あっ、はっ、はい!もちろん!」


突然話を振られて、しどろもどろにそう答えた。


「えー、じゃあおれ今日***ちゃん持ち帰っちゃおうかなァ!」

「……………へ?」


となりに座っている男性が私のカオを覗きながらそう言うと、周りから囃したてるような声が続く。


「あーもう持ち帰っちゃってください!***はほんと全っ然男っ気なくてこっちも困ってるんですよ!」

「へェ!そうなの?」

「あ、い、いや、あの、」

「はい!じゃあ決まりね!***!このチャンスを逃しちゃダメよ!」


そう言って、同僚は私に向かってびしっと指をさした。


えええええ!?


な、なぜこんなことに…!!


こんなっ、もちっ、持ち帰るとか言われたの初めて…!!


クリスマスの夜は女の子がいつもの3割増しぐらいかわいく見えるってテレビで言ってたけど…


本当だったんだ!!


妙なところに感心しつつも、頭の中ではどううまく切り抜けようかと脳みそをフル回転させている。


「じゃあ***ちゃん、おれんち行っちゃう?」

「いっ、いやいやいやいやっ…!!」


ど、どうしよう、


やっぱり騙されたとはいえ合コンに来ておいて、恋人つくる気はありません、なんて通用しないよね…


浅はかだった…!!


私のバカ…!!


「じゃあ***ちゃんとおれ一抜け、」

「やっぱり!***ちゃん!」


突然、後方から鈴の鳴るような綺麗な声が聞こえてきて、その場にいた全員がその方へ視線を向けた。


「ダっ、ダリアさん!?」

「***ちゃーん!」


美しいカオをほんのり赤らめて、ダリアさんはケラケラと笑いながら私をだきしめた。


で、できあがっている。


合コン参加メンバー全員が、ダリアさんに見とれて唖然としている。


私を持ち帰ると言っていた男性も、もはや私なんぞには目もくれていない。


「会いたかったわ、***ちゃん!どうして今日来てくれなかったの?」

「い、いや、あの、ちょっといろいろあって、……………で、でも、ダリアさんがどうしてこんなところに?ローたちとパーティーのはずじゃ…」

「そうよ?だから、ほら!」


そう言って、ダリアさんは自分の後方へカオを向けた。


「***!?***じゃねェか!!」

「なに?どうして***がここにいるんだ?」

「シャ、シャチくん…!!ペンギンさん…!!」


おなじみの二人が、目をまるくして私を見ている。


ち、ちょっとまって、


まさか…!!


「これからここで二次会なのよ、***ちゃん!」


やっ、やっぱり…!!


と、いうことは…


すぐにその考えに行き着き、私はおそるおそる皆がやってきた方向へ目を向けた。


でーんでーんでーん、でーででーん、でーででーん…


そんな効果音が聞こえてきそうなどす黒いオーラを放ちながら現れたのは…


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