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「うわあああんっ…!!キャプテーン…!!」
「おれも連れてってくれよう…!!」
「キャプテンと離れるなんてっ、おれァ…!!おれァ…!!」
「うおおおっ…!!キャプテーン…!!」
「…………………。」
空港で人目もはばからず泣き叫ぶ男たちを見て、ローは大きく溜め息をついた。
「気持ちが悪ィんだよ。いい加減泣き止め。うぜェ。」
「もうお別れだってェのに、それでも辛辣なキャプテンがおれたちは好きだァァァ!!」
「おれも好きだァァァ!!」
「おれなんて愛してるー!!」
「…………………。」
おいおいおいと泣き崩れている仲間たちをよそに、ペンギンはいつも通りローの横に立った。
「ダリアはどこに行ったんですか?そろそろフライトの時間ですよね?」
「…さァな。」
なんとなく予想はついていたが、ローはそう言葉を濁した。
ペンギンも何かを感じ取ったのか、それ以上何も聞かなかった。
「ギャブデェェェン…!!おでのごどっ、わずれないでくだざいねェェェ…」
「…鼻水を拭け、シャチ。」
ペンギンにそう言われて袖口で鼻を拭ったシャチに、ローはポケットから取り出したものを放った。
「わっ…!!な、なんすかキャプテン、……………車のキー…?」
「やる。」
「えっ、…ええっ!?」
「そこの駐車場に停めてある。好きに使え。」
「あっ、あんなたっかい車、もらえないっすよ…!!」
「うるせェ、おれに指図すんな。」
「キャ、キャプテン…」
「…あんな事故りそうなボロい車、もう乗んなよ。」
「…!!……………ギャブデン…!!」
ぶわりと涙を溢れさせると、シャチは勢いよくローへと走り寄った。
それをなんなく交わすと、シャチは「ぶべェ!」と情けない声を上げながら床に転がった。
「チョーシのんな。」
「ううっ、おれの愛は最後まで受け止めてもらえないんすね…」
「ほら、シャチ。恥ずかしいから早く立て。」
「ペンギーン…」
「おまっ、鼻水をつけるな!」
いつものように小競り合いを始めた二人を口の端を上げながら見ていると、ダリアが戻ってきた。
その表情は、案の定曇っている。
「…もううろちょろすんなよ。そろそろ時間だ。」
「でも…」
「ダリア!どこ行ってたんだ?」
シャチがそう尋ねると、ダリアは少しためらったのち、その理由を口にした。
「***ちゃん、探しに行ったんだけど…」
「…………………。」
予想通りのその言葉に、ローは小さく溜め息をついた。
「あっ、そういやアイツいねェじゃん!なんだよ、また迷ってんのかァ?しかたねェな、おれが探して、」
「いい。」
「ぐえっ…!」
走り出そうとしたシャチの首根っこを掴んで、ローは言った。
「アイツは、……………来ねェよ。」
「トラファルガー先生…」
「…………………。」
小さく呟かれたその言葉に、ダリアとペンギンは黙りこんでしまった。
「…ダリア、行くぞ。時間だ。」
「……………ええ。」
ぐるりと空港内を見回したあと、ダリアは小さな声でそう答えた。
こうしてローとダリアは、むさ苦しい送別のなか、飛行機へ向かった。
とうとう、***は現れなかった。
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