どうか、君の愛を---Happy Merry Christmas!2012--- -2

ぽかんと口を開けた***の手を強く握りしめて、エースは繰り返し言った。


「……………行くな。」

「エ、エース、」

「***に会えなくなるなんて、……………耐えらんねェ。」

「や、やだな、お正月休みだけだよ?」

「それでも、いやだ。」

「そ、そんな、……………困るよエース…」


そう言って、***は頬を赤らめながら俯く。


「おれの気持ち知ってて、弄んでんのか?」

「も、もてあそぶなんて、そんなオーバーな、」

「だってそうだろ?じゃなきゃ、他の男のとこになんて泊まったりしねェ。」

「いや、他の男って言っても、」

「それとも、」


ぎゅうっと、***の手を握る手に力を込めた。


「おれより、……………そいつが好きなのか?」

「な、なに言って、」

「そのままもう戻ってこねェつもりなんだろ。」

「ど、どうしてそうなるの、」

「***、」

「えっ、ちょっ、わっ…!」


***の身体を引き寄せて、その腕の中に閉じ込める。


久しぶりのその距離に、エースの感情が昂った。


「好きだ、***…」

「っ、エー、」


名前を呼ぼうとした唇を、無理矢理塞いだ。


その瞬間、プツリと何かが切れて、エースはたまらず舌を入れる。


ビクリと、大きく***の身体が揺れた。


……………かわいい、


すげェ、かわいい。


こんなカオ、誰にも見せたくねェ。


触らせたくねェ。


……………渡したくねェよ。


「は、あ、エース、」

「***、……………おれとまた付き合って。」

「……………え?」

「恋人同士に戻ろう。」

「エ、エース…」

「この前も言ったけど、おれはもうおまえを傷付けたり泣かせたりしねェ。」

「…………………。」

「そんなこと言われても、今すぐには信用できねェかもしんねェけど…」

「…………………。」

「だから、その、……………***がまたおれを信用してくれるまで、待ってようと思ったんだけど…」

「…………………。」

「でも、……………おれ…」


…………………あー、もう、


最悪だ。


さっき決意したばっかなのに。


***の気持ちを一番に考えようって、


そう決めたはずなのに。


結局、自分の気持ちを押し付けちまった。


どうしてこんなに余裕ねェんだよ、おれは。


…………………でも、


***が離れていくのを、指咥えて見てるだけ、なんて…


やっぱりできねェ。


……………愛してるんだ。


他には、なんにもいらねェから、


だから、


「…………………おまえがほしい。」


懇願するように***を見つめると、ふわりと赤らむその頬。


どんな***も、たまらなく愛しい。


そう思えるのは、***だからだ。


中途半端に終わった恋を引きずって、こんなに大切な存在を手放そうとしていたなんて。


だけどもう、おれはあの頃のおれじゃない。


頼む、***、


…………………信じてくれ…


その想いが伝わるように、***をだきしめる腕に、ぎゅうっと力を込めた。


「…………………。」

「…………………。」

「あ、……………あのさ、エース、」

「答えはイエスしか聞かねェ。」

「い、いや、そうじゃなくて…!」

「?……………なんだよ?」


明らかに動揺している***に、怪訝に眉を寄せながらも、エースはそう尋ねた。


「いや、だから、その、…………………私たち、付き合ってるんじゃないの?」

「…………………。」

「…………………。」

「…………………………は?」


そう素っ頓狂な言葉を上げて、エースは自身の胸の中でわたわたと慌てふためく***を見つめた。


「だっ、だからっ、そのっ、……………私たち、もう付き合ってるんだよね?」

「は、……………はァ!?」

「えっ、あれっ、ちっ、ちがうの!?」


やだっ、うそっ、どうしようっ、だってっ、と、エース以上に動揺している***。


「ちょっ、ちょっと待ってくれ…!!どっ、だっ、だっておまえっ、全然返事くれなかったじゃねェか!!」

「へっ、返事って?」

「だからっ、そのっ、……………この前のおれの告白に!!」

「でっ、でも一緒にラーメン食べに行ったよ?」

「なっ…!!」


なんだそれ!!


あれが返事!?


一緒にラーメン食いに行ったことがおれの決死の告白への返事!?


「そんなんでわかるか!!」

「だっ、だって、告白された後にデートするってことは、つまり『いいよ』っていうことにならない?」

「ならねェ!!ならねェ、けど…!!」


なんか***なら納得できる…!!


そういえばこいつはそういうやつだった…!!


気軽に男と二人で食事とかしないやつだった…!!


そんなことも見抜けないなんてやら今までの我慢はなんだったんだやらさっきの葛藤はいったいやら、いろんな感情がいっきに押し寄せてきて、エースは深く項垂れた。


「あ、…………………あの、エ、エースさん?」

「…………………。」

「ご、ごめんね?なんかいろいろと伝え漏れがあったみたいで…」

「……………漏れまくりだろ、バカ…」

「……………えへへ。」

「えへへ、じゃねェよ、……………ったく…」

「…………………好きだよ。」

「……………へ、」


その一言に、パッとカオを上げると、はにかみながら優しく微笑む***のカオ。


「私、エースのこと好きだよ。」

「…………………。」

「ずっと、ずっと好きだった。」

「…………………。」

「アメリカにいる時も、毎日エースのこと想ってた。」

「…………………。」

「……………エースのこと想ってたから、私、……………強くなれたんだよ。」


ありがとう。


そう言って、恥ずかしそうに頬を染めながら笑う***に、エースは今まで感じたことのないような暖かさで胸が満たされるのを感じた。


「あ、えーっと、……………あっ、そういえば、アメリカ旅行はボニーも一緒に行くんだよ!」


照れからか、***はそれをごまかすように大きく声を張って話し始める。


「あっ、あとっ、ボブはすでに結婚してて、奥さんとラブラブで、」

「…………………。」

「わっ、私ほら!見た目が幼いから、自分の子どもみたいに思ってるんだって!し、失礼しちゃうよね!」

「…………………。」

「そ、それからっ、えーっと、」

「…………………。」

「あっ!ケ、ケーキもう一個食べっ、……………わっ…!!」


立ち上がろうとした***の腕を強く引いて、エースはそのまま***を担ぎ上げる。


「ちょっ、ちょっとエース…!!」

「悪ィ、……………ちょっともう無理。」

「へっ、」

「我慢できねェ。」

「え、えっ、ちょっ、ちょっとまって、」

「大丈夫だ。***が壊れたら、ちゃーんとおれが介抱してやるから。」

「!!むっ、むりむりむりむり…!!そのっ、久しぶりだしっ、しっ、死んじゃうよ!!ちょっ、エースっ…!!…………………いいいいいやあああああ!!」


そんな***の悲痛な叫びは、ベッドルームのドアを閉める音に掻き消された。


どうか、君の


サンタさん、


ほかにはなんにもいりません。


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