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 でかい。


 第一印象はもうそれに尽きる。


 人って頑張ればここまで大きくなれるのか。


 あまりにも現実離れしすぎていて、頭の中でそんなことを考えてしまった。


「グラララ……! 会わせたい女がいるなんて言いやがるから何事かと思ったら……いつのまに女の好みが変わったんだァ? なァ、息子よ……!」


 そう豪快に笑って、酒をぐびりと流し込んだ。


「んなっ、ちっ、ちげェよオヤジ……! ***はそういうんじゃなくてっ」

「グラララ……! まァいい……! それで」


 その大きな瞳が、私をぎろりと見る。


 思わず、身体が震えた。


「おまえか。『異世界』から来たとかいう女は……」

「あ……の」


 思ったように、声が出ない。


 こめかみから、つうっと汗が伝って落ちた。


 ただ、座ってるだけなのに、すごい威圧感。


 これが……白ひげ……!


「***」


 ふとそう呼ばれてカオを上げると、エースが私を見てふわりとほほえんだ。


「大丈夫だ。おれがついてる」

「エース……」


 ……そうだ。私には、エースがついてる。


 ……よしっ!


「あっ、あのっ。はじっ、はじめまして。 ***と申します」


 叫ぶように言って、丁寧に頭を下げた。


「どういうわけか、異世界から来てしまいまして」

「……」

「行くところが、その……ありません」

「……」


 白ひげさんは何も言わずに、ただただ黙って私の話を聞いている。


「雑用でも、なんでもします」

「……」

「決して、ご迷惑はかけません。なので」


 大きく息を吸って、白ひげさんをまっすぐに見つめた。


「私を……この船にいさせてくださいっ」


 勢いよく頭を下げると、汗がぽたりと床へ落ちた。


「お願い……します……」

「……」


白ひげさんは、何も言わない。


 やっぱり、ダメなのかな。


「……***、といったな」


 突然そう問われて、勢いよく頭を上げた。


「はっ、はいっ」

「まずおまえに、言っておきたいことがある」

「は、はい……」


 思わず、ごくりと喉が鳴った。


 なんだろう……。


 何を言われるのかと、ドキドキしながら身構えた。


 すると、白ひげさんはおもむろに立ち上がって、私の前に片膝をついた。


 な、何を、


「息子が……世話になった……!」

「……え?」


 そう言って、その大きな頭を私に向かって下げる。


「仲間もいない、知らない世界に放り込まれたコイツは……さぞかし不安だっただろう……」

「オヤジ……」


 白ひげさんの突然のこの行為が、エースにとっても意外なものだったのか、私と同じように目を丸くして白ひげさんを見つめている。


「息子を……エースを救ってくれたこと。礼を言う」


 私を見つめると、白ひげさんはとても穏やかな表情で笑った。


「いえ、そんな……」


 困り顔でエースを見上げると、照れたような、それでいてとてもうれしそうな表情をしていた。


 それを見て、胸が暖かくなる。


「グラララ……! エースと数日一緒に過ごしたってこたァ、大した体力と精神力だ……!」

「そりゃどういう意味だよ、オヤジ……」


 エースが困ったように眉をハの字にして笑う。


「息子の恩人は、オヤジであるおれの恩人だ……***」

「はっ、はいっ」


 姿勢を正して白ひげさんを見つめると、三日月型のひげの奥で口の端を上げたのが見えた。










「ようこそ……! 我が白ひげ海賊団へ……!」









「えっ」


 っていうことは、もしかして……!


 思わずエースを見上げた。


 白い歯を出して、にかりと笑うエースと目が合う。


「……! あっ、ありがとうございます……! よろしくお願いしますっ」


 よ、よかったー!


 緊張がとけて、へなへなと地面に両膝をついた。


「グララララ……! こんなことで腰抜かすようじゃこのグランドラインではやっていけねェぞ……!」

「あっ、はっ、はいっ」


 その一言にすくっと立ち上がると、白ひげさんは一段と高らかに笑った。


「おもしれェ女だ……! おいエース……! 今夜は宴だな……!」


 白ひげさんのその一言に、エースは満面の笑みを見せる。


「あァ、そうだな! さっそく用意させる。***、行くぞ」

「へ、あっ、ちょっ、エース……! あっ、あのっ、しっ、失礼しますっ」


 流れについていけないままエースに手を引かれ、大きな船長室をあとにした。


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