その捕食からは逃げられません---Marco---

「いくぞ、***。」

「いいよ、エース。」


そう合図をすると、私と親友であるエースは標的に向かって突進した。


「くらえマルコ!!今だ***!!」

「まかせてエース!!」


エースがマルコ隊長を羽交いじめにしているあいだに彼のわき腹に手を入れる。


くらえ、こちょこちょの刑!!


こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ…


………あれ。


エースと一緒に恐る恐る顔を上げると、怒りオーラまるだしのパイナップル。


「……………おまえら…なにしてんだよい。」


こわっ!!


「ずらかるぞ***!!」

「りょーかい!!」

「コラ***!!待てよい!!」


マルコが怒ったー!!わー!!


と、エースと二人できゃっきゃ言いながら走り去る。


いつものモビーディック号の光景である。


「こちょこちょが効かねェなんて信じらんねェよ、人間じゃねェあれは。」

「エースは効きすぎだよね。たまに涙と一緒にノーズウォーターでてるもんね。」

「なんでそこだけ英語。」


毎日毎日懲りもせず二人してマルコ隊長をからかって遊んでいる。


というか私の場合そんなことでもしないとこの広い船の中ではマルコ隊長に会うことができない。


一番隊でもエースみたいに隊長でもない私にとって、想い人であるマルコ隊長と会える大切な時間だ。


エースと親友でよかった。


それ以外はなんにも役に立たないけど。


「失礼なやつだな。おれがいないと何もできないくせに。」

「あれ、声にでてた?」

「透けてんだよおまえ。」

「………キモイやめてこっちみないでヘンタイ。」

「そっちの透けるじゃねェ!マルコにバラすぞ、おまえのストーカー行為の数々を!」

「うそですごめんなさいエース様。」


わかればいい、と偉そうにうんうん頷いた。


この気持ちを知っているのはエースだけ。


一隊員の私にとって彼は雲の上の人なのだから。


想っているだけで幸せですとか思って今日も空を見上げるアンニュイなわたし。


―…‥


ついに来てしまったよこの日が。


みんながいるであろう灯りの先を怨めしげに睨む。


何人かの船番を残してマルコ隊長やエース、ほとんどの隊員が夜の街へ消えていった。


切ないことに今日は船番のうちの一人だ。


エースの出掛けるときの幸せそうなカオがマジでムカついた。


今日は頑張って5回はイってくるとかじつにどうでもいい宣言をされた。


逝けばいい、アイツは。


はぁ…


マルコ隊長もきっと今頃キレイなオネエサマとおたのしみ中だ。


白ひげ海賊団の事実上No.2であるマルコ隊長はとてもよくモテる。


このまえ船内で一番キレイなナースとマルコ隊長がのーこーなちゅーしてるのを見掛けたときはショック死しかけた。


一瞬お花畑で手を振る死んだおっかさんに会えた。


わかってる、叶わない恋なんだって。


はじめはそれでもいいと思っていたのに、マルコ隊長を知るたびにどんどん欲ばりになっていって。


この想いはどこにゆくんだろう。


いずれ私の屍と一緒に、海へ沈んでいくのだろうか。


そんなことを考えたら胸の奥がどうしようもなく痛んで、涙がでそうになった。


「…んだよあのパイナップル。あれいずれハゲるね。死滅するからね、あの果樹園は。後頭部からくるタイプだよあれ絶対。」


そしてだれにも相手にされなくなればいいんだ!


ざまーみろパイナップルめ!


ぬわははははは!!


「………誰がハゲるって…?」

「ぎゃあああああああ!!!!」


マ、


マ、


マ、


マルコ隊長!!!!


地を這うようなひっくい声の持ち主はまぎれもなくパイナップ…マルコ隊長だった。


なぜに!?


なにゆえここに!?


「あ、いや、今のは、その、」


助けてエース!!


戻ってこいエース!!


でも今頃ヤツはきっと3回目くらいの昇天ちゅ、


「オイ、今エースのこと考えてるだろい…」

「………え、いや、あの、」


どうしよう。


ほんとにどうしよう。


マルコ隊長と二人きりでなんてしゃべったことない。


ヤバイ。


緊張しすぎて泣きそう…


「今はおれといるんだ。おれのことだけ考えろ。」


なんか違和感あるなと思ったらよい付いてないやなんて頭の片隅で考えてる私は案外肝が座っているのかもしれない。


それでも私の瞳は一瞬たりともマルコ隊長のそれから逸らせずにいた。


マルコ隊長が、あまりにも真剣な瞳をしてたから。


「…おまえはエースに惚れてるのかよい?」

「…はえ?」


はい?と、え?がまざって気の抜けた返事になってしまった。


え?


なぜにエース?


「エ、エース…隊長はオトモダチです…」

「…恋愛感情はねェのかよい。」

「………まったくないです。」


あなたが好きなんですから、とつい言ってしまいそうになった。


「そうかよい…」


マルコ隊長はそれっきりうつむいて黙り込んでしまった。


な、なんだこれ。


なんかの試験?


もしかして一番隊に入れんのかな、わーいなんてこの緊迫感から逃れたくてわざとバカバカしいことを考えてみる。


「***…」

「はっ、はい…」


心臓の音で、声が聞こえにくい。


耳をすまして次の言葉を待っていたら、マルコ隊長がおもむろに顔を上げた。


「好きだ。」

「……………え?」

「おまえに惚れてる、***。」


……………あ、あれ、


幻聴か?今の。


ついにここまできた?


あぁ…でも、


……………夢でもいい。


「マ、…マルコたいちょ」

「なのに…おまえはいつもエースと一緒にいるしよい…やっと会えたと思っても…すぐ逃げちまうから…」


気付いたらマルコ隊長にきつく抱きしめられていた。


「欲しい…***。…心も、身体も…ぜんぶ…」


吐息混じりで甘くささやかれると、すぐさま抱き上げられた。


「マ、マルコたいちょ………ちょ、ちょっと待って、」

「限界だよい。逃げられねェように今すぐ身体つなげてやる。」


その捕食からは逃げられません


やっとうまくいったか、***!!


エ、エース知ってたの!?


エース、***からもうちっと離れろい。


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