ようこそ、ペンギン相談室へ

ある日―…‥


「ペンギーン、またフラれたァ…」

「元気だせ、シャチ。おまえの魅力が充分に伝わらなかっただけだ。」


またある日―…‥


「ペンギンさん、どうしたらおれ強くなれますか。」

「おまえはいい筋いってるぞ。他の戦闘員をよく観察するんだ。いいところだけ盗め。」


またまたある日―…‥


「おい、ペンギン。おれの服がねェ。」

「………洗濯担当に聞いてきますからちょっと待っててください、船長。」


1日のうちにだれかになにかを相談されることが少なくとも10回以上はある。


たよりにされることはうれしい。


たよられれば、真剣にそのことに向き合い、アドバイスを与えたいと思う。


なかには困った相談もある。


今一番、おれの頭をなやませているのがこの女―…‥


「あっ!ここにいたんだ、ペンギン!」

「………***。」


ニコニコと笑いながら、***はおれのとなりに座る。


「よくここがわかったな。」

「ふふっ…なんとなくね!」


見張り台から、二人で真っ暗な海を見つめる。


「………で?」

「うん?」


なんのことかとかわいらしく首をかしげた。


「ふふっ…とぼけるな。いつもの相談だろう?」

「へへっ…やっぱりわかっちゃった?」


そうへらりと笑ったかと思うと、すぐさま真剣なカオになった。


コロコロと表情がかわるのは見ていて楽しい。


「昨日ね、私の好きなひとがすっごく綺麗な女のひとと歩いてたの。………やっぱり男のひとってスタイルがいい綺麗な女のひとが好きなの?」


言いながら悲しそうにうつむいた。


***のいう好きなひととは、船長のことだ。


直接そう言われたわけではないが、見ていればわかる。


現に、昨日船長は島で綺麗な女を買った。


「………たしかに男はそういう女が好きだ。そういう女を見ると抱きたいと思う。」

「…………………。」

「………でも、」

「?」

「心から守りたい、ずっと一緒にいたいと思う女はそうじゃない。」

「…………………。」

「そんなうわべだけ飾ってるような女じゃないんだ。」

「…………………。」

「………おまえはその男のそういう女に、きっとなれる。」


船長は***に惚れている。


だからこそ、仲間にひきいれたわけだが…


いかんせん、あの船長だ。


おそらく恋などしたことがないだろうから、まず自分の気持ちに気付くのが遅い。


***が不安になるのもあたりまえのことだ。


「………ほんとに?ペンギン。そう思う?」

「あァ、ほんとにそう思う。」


***の目をまっすぐに見てそう答えた。


おまえにそんな悲しいカオは似合わない。


笑っていてくれ。


おまえのしあわせが、おれのしあわせなんだ。


たとえ、おまえが一生おれのこの想いを知ることがなくても…


おれは、おまえにだけは笑っていてほしいんだ。


「……………そっか。………ありがとう!ペンギン。」


そう言ってふわりと笑う。


「……………あァ。」


その頭をなでてやると、***は安心したように目を閉じる。


……………あぁ、


もう、くるなよ。


こんな夜ふけに。


そんなカオするな。


………壊したくなる。


「………さっさと告白して、これからはその男になんでも話せ。」


ポンポンと、最後に頭を二回叩くのが合図。


こうすると、***は立ち上がって部屋に戻る。


「…………………。」

「……………***?」


なぜか、***は深くうつむいてぴくりとも動かない。


……………いつもと違う。


「***?どうした?」

「…………………。」

「具合でも悪いか?」

「…………………。」


これはおかしい。


ほんとに具合が悪いのかもしれない。


「***、ちょっと待ってろ。いま船長を」


そう言って立ち上がろうとしたときだった。


「………ペンギン。」


弱々しく名前を呼ばれて動きを止める。


「***!大丈夫か?水でもいるか?それともほかになにか」

「……………すき。」

「そうか、すきか。よしわかった、ちょっと待っ」


…………………ん?


……………すき?


いま、すきって言ったか?


そんなことを考えていたら、***がおもむろにカオを上げた。


見たこともないような真剣な目に、心がざわつく。


「………すきなの、ペンギン。」

「……………は?」

「ずっと、すきだった。」


…………………なに言ってるんだ、コイツは。


おれを船長と間違えてるのか?


いや、でもさっきたしかに「ペンギン」って…


ち、


ちょっとまってくれ。


もしかして…


***の好きな男って…


「……………おれ?」


そう問うと、コクりと小さくうなずく。


「ペンギンが昨日綺麗なひとと宿はいっていくの、見た。」

「……………あ、いや、あれは、」


……………たしかに。


昨日誘われるがまま島で出会った女を抱いた。


まかり間違って欲のまま***に手を出してしまわないように、性欲は溜めこまないようにしていた。


「……………もういやなの。」

「…***…」

「………ペンギンがほかのひとにさわってるなんて、考えるだけでつらい。」


ポロポロと涙を流しながら、それでも目を逸らさずに言う。


「私じゃダメかな?綺麗じゃないし、スタイルもよくないけど…ペンギンのことだれよりも好きだから。だから、」


言い終わるより早く、***の唇に噛みつくようにキスをした。


ようこそ、ペンギン相談室へ


船長ー!!やっとうまくいったー!!相談のってくれてありがとう!!


だから言っただろ、さっさと言えって。それよりペンギン、おれの服がねェ。


……………洗濯担当に聞いてきます。


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