紳士の嫉妬にご用心
「…………………。」
「…………………。」
「…………………。」
「………あ、あのぅ…サ、サンジくん…」
「…………………。」
………どうしよう。
サンジくんを怒らせてしまいました…
ただいま二人の間には、冷たい空気が流れております。
………どうしよう。
ほんとにどうしようっ!
まさかあのサンジくんが怒るなんて!
なんでこんな状況になっているかといいますと…
時はさかのぼり、昨日の夜―…‥
「おう、***じゃねェか。」
「あっ!ゾロ!」
停泊中の街でぶらぶらしていたところ、ゾロと出くわした。
「ゾロもう帰るの?」
「いや、どうやらあそこの店にうまい酒がおいてあるらしくてな。一杯やってくる。」
「へぇ…いいな。」
「おまえもくるか?」
「行くっ!」
そんなこんなでゾロと二人でお酒を飲むことになって…
ほんとにおいしいお酒だったから、ゾロと同じペースで飲んでしまい…
目が覚めたら自分の部屋のベッドの上。
あたりまえのことながら、どうやら私は立つこともできないくらいベロンベロンになってしまったらしい。
まったく記憶がないので、てっきりゾロが連れ帰ってくれたんだと思い、お礼を言えば、
「おれじゃねェよ。グルまゆエロコックだ。」
と言われた。
さすが私のダーリンなんて気が利くのなんてスキップまじりでキッチンの戸をあけたら…
―…‥冒頭にもどる。
どうしよう。
ほんとに。
………フラれるかも。
あんな醜態をさらして、嫌気がさしたのかもしれない。
そもそもサンジくんと私が付き合ったのだって、私のこれでもかという告白攻撃にサンジくんがしかたなく応じたようなもんだ。
『***ちゃんにはかなわないな。』
なんて、あのグルグルまゆをハの字にして笑ってくれたっけ。
大してかわいいわけでもない私を選んでくれたから、
きっと、
きっとだれよりしあわせにしてみせる。
そう思っていたのに…
「………サンジくん………迷惑かけて、ほんとにごめんなさい。」
「…………………。」
頭を下げるも、サンジくんの反応はない。
………どうしよう。
なんかもう…
………泣きそう。
その時、サンジくんがくわえていた煙草を灰皿へおしつけたのが、視線の端に見えた。
「……………***ちゃん。」
カタンっと音を立てて私のまえの椅子を引くと、私のカオをのぞくように、まえのめりで座った。
「おれがどうして怒ってるか、わかるかい?」
「……………え?」
ど、どうしてって…
そんなの…
「………迷惑かけたからじゃないの?」
そう問うと、サンジくんはしずかに首を振った。
「………じ、じゃあ醜態をさらしたから…」
「***ちゃんがあんなふうになるの、いまにはじまったことじゃないだろ?」
「う、」
「ほんとにわからない?」
………ど、
どうしよう。
わからない。
てっきり、あんな醜態さらすような恋人が嫌になったんだと思ったんだけど…
「***ちゃん、だれとずっといっしょにいた?」
「……………へ?」
だ、だれと?
「ゾ、ゾロだけど………それがどうかした?」
そう答えて首をかしげると、サンジくんは困ったように笑った。
「おれのプリンセスは危機感がないな。」
そう言いながら、うつむきかげんだった私の頬に手をそえる。
サンジくんの煙草の匂いが広がって、ドキドキした。
「危ないだろ?他の野郎のまえであんなフラフラしてたら………なにされても文句言えないぜ?」
……………へ?
「でっ、でもっ、ゾロだよ?仲間だし、ゾロが私になにかするなんて」
「おれだってそんなこと思っちゃいないさ。………けど、」
ふわふわと私の頭をなでる。
「あんなかわいい***ちゃん、だれにも見せたくねェんだよ。仲間だろうがなんだろうが。」
まっすぐに見つめられて、恥ずかしすぎて息をするのも忘れてしまう。
「おれのかわいいプリンセスをひとりじめしたいと思っちゃいけないかい?」
「そっ、そんなことっ、」
……………う、うそ。
サンジくんがそんなふうに思ってたなんて…
どうしよう。
うれしすぎる。
「と、いうわけで、」
そう言ってサンジくんが私の唇を指でなぞる。
綺麗なブルーの瞳に、なんとも情けないカオをした私がうつった。
……………私、この視線に弱い。
「おしおきさせて頂きますが、よろしいでしょうか?………プリンセス。」
紳士の嫉妬にご用心
おい、ぐるまゆ。なんでおれのメシだけ野菜しかのってねェんだよ。
うるせェマリモ。おれのかわいい***ちゃんにあんなに飲ませやがって。
(……………ごめん、ゾロ。)[ 4/7 ][*prev] [next#]
[mokuji]
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