お酒と鬼畜と愛し君と 1/2

今日は、やけに敵船に遭遇することが多かった。


もちろん、我が白ひげ海賊団は、オヤジさんの力を借りるまでもなく連戦連勝。


敵船が多い=奪ったお宝もざっくざく!てなわけで、今日はいつもよりも華やかな宴となった。


本日のヒーローは、全戦自ら敵船に挑んでいった、エース隊長。


そのカッコよさたるや山の如し。


そんなエース隊長に、ナースさんたちはいつもより大胆なボディタッチで、我こそが今夜!と、エース隊長を誘惑している。


そりゃあ、あんなカッコいい姿を見せつけられたら、だれだってこの人に抱かれたいと思うだろう。


ま、まぁ、私は思いませんけど。


というか、相手にされないから思えませんけど、ぐすん、が正しい。


私の恋愛シミュレーションセンサー(略してラブシミュ)は、とても賢い。


エース隊長にうっかりときめこうものなら、センサーが即座に作動し、『え、あの人すか?だいぶ無理めっすよ?それでもいいんすか?身も心もボロックソになってもいいんなら頑張ればいいすけど。』と“身の程を知りましょうモード”になる。


ボロックソになるのは嫌なので、私の中でエース隊長はいつまでも『憧れ』のまま。


でも、それでいい。


エース隊長の活躍を遠くから見られているだけでも、私は充分うれしい。


たまに声を掛けてもらえたら、それだけで向こう3年はしあわせに暮らせる。


私の人生、それでいいのだ。


脇役は脇役らしく、ひっそりと地味に生きていこう、うんうん。


「なに一人で唸ってんだァ?***。便秘か?」


喉をクツクツと鳴らしながら嫌味ったらしく現れたのは、私の所属する隊の隊長様々。


「ちっ、ちがいますよイゾウ隊長!乙女に向かってなんてことおっしゃるんですか!」

「乙女だァ?どこにいるんだよ、んなの。おれの目にァ写ってねェなァ。」


お酒が入ったイゾウ隊長は、通常の5倍ほどドS感が増す。


お、おそろしや。


「おい、下僕。酒が足らねェんだよ。さっさと持ってきな。」

「イ、イゾウ隊長、私はイゾウ隊長の下僕になるために船に乗ってるわけじゃ、」

「あァん?」

「仰せのままに!ご主人様!」


綺麗なカオに凄まれて、私は即座に下僕に成り下がった。


「20秒で戻ってこい、***。」

「んなっ…!」


くそう…!こんの鬼畜やろうっ…!


走れってか!


アルコール摂取してるのに全力疾走しろってか!


ケタケタと楽しそうに笑うイゾウ隊長を心の中で罵倒しながら(まちがっても面と向かっては言えない)、私は小走りでキッチンへ向かった。


―…‥


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