Another WORLD-epilogue

「さて」


 くぐもった声がそういう。


 私は食堂の真ん中に立って、屈強な海賊たちに囲まれている。


 目の前には、くぐもった声の主。〈殺戮武人〉キラーさん。そして、


 その隣には、椅子にふんぞり返ったユースタス・キャプテン・キッド。


「はっ、はい」

「おまえは一体、この船で何ができる?」

「わ、私は……」


 思わず黙り込む。


 ちらりとみんなを見回すと、にこにこと笑って私を見ていた。


 顔をすっと上げる。大きく息を吸って、口を開いた。


「料理をちゃんと覚えます! あと、掃除、洗濯、おつかいも行けます!」

「……」

「あとっ、戦闘の仕方も覚えます! 教えてください!」

「……」

「私、私はっ」


 一際大きな声で、叫んだ。


「この船のっ、キッドの頭の役に立てるなら、なんでもします!」

「……」

「だから、私をこの船に置いてください! お願いします!」


 頭を深々と下げる。


 船員全員の視線が、キッドにいっきに向く。


 キッドはしばらく目を瞑っていた。そして、重い沈黙の後、ゆっくりと開く。


 赤い口の端が、くっと上がった。


「ようこそ。我がキッド海賊団に」


 キッドがそういうと、わっと歓声が沸いた。


 海賊たちにもみくちゃにされながら、キラーさんを見る。


 キラーさんは、仮面の中で、ふっと笑った。


 キラーさんを見ていたら、あ、と思い出されることがあった。


 キッドにとことこ駆け寄っていくと、私は声高々と宣言した。


「あと、キッドの夜伽も勉強しますっ」


Another WORLD


 ぎゃはははっ! さすがキッドの頭の幼なじみ!


 最高だなっ!


 てっ、てめェはまず一般常識から覚えやがれっ!! このすかぽんたん!!


 あ、あれ。キッド、どうしてカオ赤いの?(夜伽ってなんなんだろう)


 クク、楽しくなりそうだな。キッド。


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