17

 エースは、近くの公園まで足を運んでいた。


 ブランコでは、兄弟が仲良く遊んでいる。


「……ルフィは元気かな」


 泣き虫だった弟を思えば、胸に暖かいものがこみ上げてくる。


 おれはまた、あの笑顔に会えるだろうか。


 兄弟が、手を繋ぎながらブランコを離れていく。


「この世界は平和だな」


 あっちの世界でも平和な島はあるが、それでも世は大海賊時代。


 ある日突然、海賊の手で焼け野原にされてしまう可能性も少なくない。


「***はこっちの世界に生まれて良かったな」


 警戒心はないし、お人好しだし。


 来たのがおれだったから良かったものの、悪いヤツだったらきっととっくに殺されてる。


 ……。


 ……ほんとにありえそうで怖い。


 それに、逆も言える。


 おれも、***で良かった。


 これが***じゃなかったら、今頃おれは不審者扱いで、誰にもなにも信じてもらえず、気がおかしくなってたかもしれない。


 アイツが。***が信じてくれるから、おれは今立っていられるんだ。


「なんか恩返ししねェとなァ」


 考えてみたら、世話になりっぱなしだ。


 働きながらおれの飯も作って、休みの日だっておれのために海に付き合ってくれたり、不審がられるような本まであんなに買って。


 金だって、きっといつもより遣わせてしまっている。


「帰ったらもう会えねェんだし、こっちにいるうちになんかできねェかな」


 ……そうか。帰ったらもう会えねェのか。


 当然だ。おれと***は、住む世界が違う。


 おれはこっちでは生きていけないし、***はあっちでは生きていけない。


 いずれは、必ず別れがくる。


 ……。


 ……帰るか。


 そろそろ***が帰ってくる時間だ。


 エースは勢いよく立ち上がると、早足で帰路についた。


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