13

「***っ! ……***っ!」


いたたっ。痛い痛い。なになにっ


「***っ! 起きてくれ! ***っ!」


 頬に走る痛みに耐えかねて、私はうっすら目を開けた。


「……エース?」

「おお、起きた! おはよう、***!」

「おはよう……エース、今何時?」


 なんかまだ薄暗い気がするんですけど。


「4時だ!」


 4時か。なるほど。4時か。


「おやすみ、エース」

「あっ! ダメだ! ***起きろ!」


 そんなこんなで、私は半ば強引にベッドから引き剥がされた。





「試してみたいことがあるんだ」


 そう言って、エースは私のカオの前に何かを差し出した。


「……ネックレス?」


 少し薄汚れた、なんの変哲もないネックレスだ。


「あァ。こっちにくる直前に、敵船からかっぱらった宝の中に入ってた」


 そう言うと、エースはその時の経緯を詳細に話してくれた。


「つまり、そのネックレスが原因かもしれないってこと?」

「確証はねェけど……多分そうだと思う」

「……」


 人を異世界に落としこむような、そんな神秘的なものは感じないけど……。


 エースがそう感じるのであれば、多分そうなんだろう。


 エースは結構、本能的になにかを嗅ぎ取ることが多い。


「エース、ちょっとそれ見せて?」


 するとエースは、「ん」と私にそれを手渡した。


 ……うーん。


 見れば見るほど、ただのネックレス。ただの薄汚れたネックレス。特別高価そうにも見えないし。


 まじまじとネックレス見つめた時だった。


「……ん?」


 ……なに、これ。


「どうした? ***」


 あれ、ちょ、ちょっと待って。これってもしかして……。


 私は手近にあったタオルを水で濡らすと、慌ててそのネックレスを磨いた。


「ど、どうしたんだ? ***。なんか変なのか?」


 エースがおろおろとその様子を窺っている。


 ネックレスに文字が刻まれていた。


 汚れで見えにくくなっていたその文字は、やはり私が予想したものだった。


「どういうこと……? どうして……」

「なんだよ***! どうしたんだよ!」


 痺れを切らしたようにエースが詰め寄る。


「エース、これは間違いなく『あっち』の世界で拾ったんだよね?」

「あ? あァ、そうだ。間違いねェ」


 おかしい。そんなはずはない。


 だって、エースの世界にこのネックレスは存在しないはずだ。


「エース、ここ見て。なんて書いてあるか読める?」


 私はその箇所をエースに見せた。


「? なんだ、これ。ここは読めるけど……ここは読めねェ」


 それはそうだ。エースにこの文字は読めない。


 だって、エースは日本を知らないんだから。


 そのネックレスの裏には、日本で作られたことを示す『made in Japan』の刻印が刻まれていた。


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