13
「***っ! ……***っ!」
いたたっ。痛い痛い。なになにっ
「***っ! 起きてくれ! ***っ!」
頬に走る痛みに耐えかねて、私はうっすら目を開けた。
「……エース?」
「おお、起きた! おはよう、***!」
「おはよう……エース、今何時?」
なんかまだ薄暗い気がするんですけど。
「4時だ!」
4時か。なるほど。4時か。
「おやすみ、エース」
「あっ! ダメだ! ***起きろ!」
そんなこんなで、私は半ば強引にベッドから引き剥がされた。
*
「試してみたいことがあるんだ」
そう言って、エースは私のカオの前に何かを差し出した。
「……ネックレス?」
少し薄汚れた、なんの変哲もないネックレスだ。
「あァ。こっちにくる直前に、敵船からかっぱらった宝の中に入ってた」
そう言うと、エースはその時の経緯を詳細に話してくれた。
「つまり、そのネックレスが原因かもしれないってこと?」
「確証はねェけど……多分そうだと思う」
「……」
人を異世界に落としこむような、そんな神秘的なものは感じないけど……。
エースがそう感じるのであれば、多分そうなんだろう。
エースは結構、本能的になにかを嗅ぎ取ることが多い。
「エース、ちょっとそれ見せて?」
するとエースは、「ん」と私にそれを手渡した。
……うーん。
見れば見るほど、ただのネックレス。ただの薄汚れたネックレス。特別高価そうにも見えないし。
まじまじとネックレス見つめた時だった。
「……ん?」
……なに、これ。
「どうした? ***」
あれ、ちょ、ちょっと待って。これってもしかして……。
私は手近にあったタオルを水で濡らすと、慌ててそのネックレスを磨いた。
「ど、どうしたんだ? ***。なんか変なのか?」
エースがおろおろとその様子を窺っている。
ネックレスに文字が刻まれていた。
汚れで見えにくくなっていたその文字は、やはり私が予想したものだった。
「どういうこと……? どうして……」
「なんだよ***! どうしたんだよ!」
痺れを切らしたようにエースが詰め寄る。
「エース、これは間違いなく『あっち』の世界で拾ったんだよね?」
「あ? あァ、そうだ。間違いねェ」
おかしい。そんなはずはない。
だって、エースの世界にこのネックレスは存在しないはずだ。
「エース、ここ見て。なんて書いてあるか読める?」
私はその箇所をエースに見せた。
「? なんだ、これ。ここは読めるけど……ここは読めねェ」
それはそうだ。エースにこの文字は読めない。
だって、エースは日本を知らないんだから。
そのネックレスの裏には、日本で作られたことを示す『made in Japan』の刻印が刻まれていた。[ 13/35 ][*prev] [next#]
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