09
***を見送った後、エースはゴロンと床に寝そべった。
「さァて、どうしたもんか……」
窓の外から見える風景に、エースは深い溜め息をついた。
「海が見えねェなァ、ここは……」
海らしきものが見当たらないどころか、潮の匂いもしない。
海賊として、海を愛するものとして、この環境は拷問に近かった。
「頭がおかしくなりそうだ……」
みんなは今頃、どうしているだろうか。
自分がいないとなれば、大騒ぎになるはずだ。
エースは、黙って船を空けるようなことはしない。
船長である白ひげはもちろん、他のクルーもそれは知っている。
心配を掛けてしまっていると思うと、エースは居たたまれない気持ちになった。
なんとしてでも、早く船に戻らなければならない。
しかし、ここに来てしまった経緯が分からない以上どうすることもできない。
エースは再び深い溜め息をついた。
「……考えごとしてたら腹減ったな」
燃費の悪い腹の虫が催促をする。
エースは起き上がると、台所へ向かった。
コンロの上のフライパンに、チャーハンが入っている。***がお昼に食べるようにと、作っておいてくれたのだ。
エースはフライパンと、手近にあったスプーンを持ってテーブルに戻った。
丁寧に、いただきますと手を合わせてチャーハンにかぶりつく。この前とは違った味付けだった。
「アイツは料理うめェな、やっぱり」
チャーハンを食べながら、エースはここ数日一緒に過ごしている女のことを考えた。
好みか好みじゃないかと言われると、好みじゃない。今まで自分が相手にしてきたタイプとはまるで真逆だ。
どんな状況下でも、女に出会えば性の対象になるかならないか考えてしまうのは男の性だ。
かといって、***が嫌いなわけではない。
どちらかというと好印象を持っている。
「面倒見の良さそうなところが、マルコにちょっと似てるな」
今は遠いパイナップル頭を思うと、自然と頬が緩んだ。
出会えたのが、***で良かった。
エースは最後の一口を平らげると、手を合わせて「ごちそうさま、***」と呟いた。[ 9/35 ][*prev] [next#]
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