本当の僕を見てくれる人なんて
今までいなかった。

僕は常に
『市ノ瀬 渚』を演じていたから。



なのに君は
いとも簡単に
僕を見つけ出してくれたんだ。


それが、
どんなに嬉しいことかわかる?



いつだって君は
僕を嬉しくさせてくれるんだ。



僕の大切な人。



僕はどこにいたって
君を見つける自信があるよ。









「**!」

「渚くん!今日はお仕事は?」


彼女はマネージャーの車から出てきた僕をいつも嬉しそうに出迎えてくれる。


「もうないんだ。ね、今日大丈夫だよね?これから出かけよ?」

「う、うん!もちろん!」


真っ赤になって頷く仕草が
どうしようもなく愛しい。

久しぶりの**。

これでもかっていうくらい
輝いて見える。



車の中で手を繋ぐと
その瞳に一瞬不安な色が見えた。


「**、どうしたの?」



僕の顔を見ながら戸惑いながらも発する言葉に僕は驚きを隠せなかった。





「渚くん…最近寝てないんじゃない?」












「…え?そんなことないよ」


どうしてこうも察しが良いのだろうか。

彼女は一瞬考えこんで、
また僕の方を見上げる。


「ね、いつも食事ってどうしてるの?一人暮らしだったよね?」

「んー、最近は補助食品とサプリメントかな。あとは外でみんなと食べることが多いよ」


いつものことだから
僕は気にもとめず答えた。

すると彼女の顔は一瞬目を見開き、どんどん険しくなってしまった。


しばらく黙ると意を決したように、
運転しているマネージャーに目線を向ける**。



「…マネージャーさん、渚くんの家に行っちゃだめですか?」

「はっ!?」

「**!?」


僕もマネージャーも耳を疑った。


どうしてそんなことを言ったのかわからない。
彼女は基本的に恥ずかしがりやで、すぐに真っ赤になってしまう。

普段僕の家に来るっていうだけで恥ずかしがるのに。
なぜ急にそんなことを…?



でも今、マネージャーを見つめる**の視線は真剣だった。



「お願いします。バレないように時間差で入りますから。渚くんを少しでも休ませてあげたいんです…」


「「……」」


いつも忙しくて少ししか会えないのに、僕の体のことを気にしてくれてるなんて…

そこまで思ってくれる**に嬉しさと
同時に自分に腹立たしさを覚えた。







「本当は、私と一緒にいないですぐに帰ったほうがいいのかもしれませんが…」

そう言って彼女はうつむく。




しばらくして運転席から大きなため息が出た。

「…わかった。今回だけだぞ。渚もできるだけ時間を確保しようとむちゃくちゃなスケジュールだったからな」


「ありがとうございます!」


嬉しそうな**はすぐに眉を下げて、
伺うようにちらっと僕を見上げる





「渚くんは…イヤだった?」


ほら。
そんな目で見つめるんだ。
どれだけ僕が喜ぶかってわかってる?


「嫌なわけないでしょ?…ありがと、**」


僕は彼女の手に自分の手を重ねて額に口づけを落とす。


「ただし!9時にはちゃんと帰すこと。いいな!?」



それを遮るかのように飛んできた声に肩を竦めながら僕たちは微笑みを交わした。






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