私の目の前を通り過ぎた一台の車。

10M先でキキーッと音を立てて止まる。



もしかして?

愛しい人の姿が脳裏に浮かぶ。











「**!」


車から降りて来たのは紛れもないあなた。


「ナギサくん!」


私たちは引力が働いているかのように走り出す。





「ナギサくん、どうしたの?お仕事は?」


クスッ、と笑う彼の表情はひだまりのように優しい。


「今日はね、もうないんだ。
ねぇ…久しぶりに**の時間、僕にちょーだい?」


ダメ?

なんて私の顔を覗き込まれたら

私の心音は破裂しそうなほど大きくなる。




ダメなわけないじゃない…

どれだけ待ち望んだ時間なんだろう。




「あ、ちょっと待っててね?」


そう言って車に向かうナギサくん。

何やらマネージャーさんとお話しているみたいだった。

しばらくして鞄を片手に戻ってくる。





あれ?

マネージャーさん行っちゃったけど…いいのかな?






不思議そうにした私に彼はその答えを教えてくれた。


「今日は二人で歩いて帰りたかったんだ。制服デートしてみたかったんだよね」









…本当は、憧れてたの。

彼氏ができたら放課後に制服でデート。




でもナギサくんは人気アイドルでいつでもマネージャーさんの車だから、諦めてた。


同じようにナギサくんも考えてくれたんだなって思うと、心があたたかくなった。







「うん…ありがとう」







私は思い出したかのようにはっとする。


「あ!でっでもナギサくんバレない!?だってお家遠いから電車乗らなきゃいけないでしょ!?」


慌てて言う私にふふ、と笑いながら彼は鞄の中から髪ゴムと眼鏡を取り出した。








少し長めの髪の毛を後ろに束ね、レンズの奥に優しい瞳に見つめられる。


「どう?これで市ノ瀬渚だなんてわからないでしょ?ただでさえ僕は気配を消せるんだから」


小さな子のようにいたずらっぽく笑う彼。

いつもは落ち着いていて、きれいな顔が笑うとより一層美しいと思う。



でも今日は、すっきりとまとめられた髪の毛がナギサくんの首筋を露にしていていつもよりも男らしかった。

それにプラスして眼鏡なんて…

もし制服を着ていなかったら大学生やそれ以上に見える。




やさしさと強さを兼ね備えたオーラを纏う彼の姿に、私は瞳を逸らせなかった。








「クスッ、じゃあ行こっか。」

ナギサくんに釘付けだった私の目線が私の右手に移される。





属に言う、


恋人つなぎ。






人前で堂々と手を繋げるなんて


本当に夢みたい…






「今日は僕の行ってみたいところにいってもいい?」

「うん、いいよ。どこ行くの?」

「ナイショ」


横から見上げたナギサくんはすごく楽しそうにしていた。



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