俺は**ちゃんと出逢って、今までの自分が置かれている状況を見つめ直した。
ナンパばかりしていた自分。
みんなと違ってなんにもない自分。
親に頼りきりの自分。
考えれば考えるほど、自分がどーしようもないヤツだってことに落胆した。
**ちゃんを誰にも渡したくなくて、誰よりもカッコよくなりたかったんだ。
修学旅行中にタケちゃんが**ちゃんを抱きしめたって聞いたとき、
今までと違う自分に戸惑っていた感情よりも俺の前から**ちゃんが消えてしまう恐怖が勝っていた。
結局**ちゃんはタケちゃんじゃなく、俺を選んでくれたワケだけど。
やっぱり**ちゃんの目には俺しか映して欲しくないんだ。
カッコよくなりたい。
**ちゃんに相応しい男になりたい。
それだけだったはずなのに。
どんどん忙しくなる仕事。
会えない日々。
連絡だってまともにできない。
俺のせいだってわかってる。
けれど。
**ちゃん不足だったときに見たシーン。
オレンジ色に染まる公園で、ブランコに佇む二人の顔は近づいていった。
まるで何かのドラマを見ているようだった。
俺の声は震えていたに違いない。
「なに、やってるの?」
俺の声で彼女から離れたその顔は、俺のよく知っているヤツで。
少しも表情を崩さずに俺を真っ直ぐ見つめる。
「なにって、**とデート?」
あたふたする**ちゃんを尻目にそのいつもの余裕な言葉。
明るく振る舞うことも怒ることもできずに立ち尽くした。
「冗談だ。俺は人のものに手を出すほど暇じゃない」
それだけ残して去ってゆく誉。
その背を見つめるしかできなかった。
俺は自分で言うのもなんだけど**ちゃんと逢って変わったと思う。
でも、誉も変わったよな。
少なくとも、女の子に対してあんな風に笑えるやつじゃなかった。
他人自体に全く興味のなかったのに。
それを変えたのは絶対に**ちゃんの存在なんだ。
その事実に対して、俺の胸中は複雑だった。
小さいときから俺らはよく二人でいた。
誉も淋しい思いをしてきて無表情に近かったヤツだから、誉があんなやわらかい笑顔を出来るようになったのは幼なじみとして本当に嬉しいんだ。
…嬉しいんだけど。
誉が**ちゃんを好きなんだろうなってわかってしまったから。
**ちゃんは俺の彼女で、
誉にあんな顔をさせるのも**ちゃん。
嬉しいよーな、
悲しいよーな、
悔しいよーな。
一つだけ言えるのは
誉にも**ちゃんは譲れないってこと。
それでも俺はいつでも宙ぶらりんのまま。
俺にはないものを誉は持っている。
誉は医者になるって夢を持っていて、
成績優秀、
スポーツも
料理もできる。
性格は取っつきにくいけど、
面倒見のいいすっげーイイヤツ。
誉をライバルと認識したとき、
初めて気づいた。
誉にコンプレックスを抱いてた自分に。
俺とは正反対で、
しっかりしていて目標もある誉。
幼なじみの誉には勝てる気がしない。