俺の大好きな女の子





透き通るような白い肌、

くりっとした黒くて大きな瞳、

染められていないさらさらな髪、

スタイルだって普通のどこにでもいるような女の子






でも普通の子とは違うんだ






彼女はいつだって俺に自信と勇気を与えてくれる









「――もうすぐだね、甲子園」

「…うん」


またあのマウンドに立つチャンスが訪れた。

みんなで手にした甲子園への切符。






今更言えない、









こわい、―――だなんて。











重労働にも関わらずマネージャーの仕事を引き受けてくれた彼女。


部誌を書き終わる頃には日が沈んでいるため家まで送り届けるのが俺の日課。


今日もこの暗い帰り道を手を繋いで歩いていた。





今日はなんとなく練習に身が入らなかった。

みんな甲子園だ!

って言って気合い入ってるのに。


その理由はわかっていたがずっと目を背けていた。








心に闇が広がってゆく










「…康人くん?」

「…あ。ごめん、なに?」


…そんな心配そうな顔を向けられたら、俺どんな顔していいかわかんないよ…

つい俯いてしまう情けない自分










「……みんな抱えてる気持ちは一緒だよ」




そんな言葉を発する彼女。


ぱっと顔をあげると、

こっちを向いて微笑む顔があった。

その顔は俺をなだめるように。






その顔に俺は嘘をつけない。








「…………**」

「うん?」

「俺…っ、怖いんだ…。また、投げられなくなるんじゃないかって…っ。
せっかくみんなで頑張ってきたのに、俺で台無しになるんじゃないかって…っ」





不安、

焦り、

またマウンドで1人で立たなければならない恐怖


いつでも心に闇がつきまとう









「……ねぇ、康人くん。みんなもね、甲子園に行けるって喜んでる反面、とても怖いんだよ。

だって緊張しないわけないじゃない。
でも、自分を信じて進むしかないんだよ。
それに野球は1人でするものじゃないでしょう?いつだってみんなが助けてくれるよ。」






強い意思を持った瞳が語る。


こんなに俺より小さいのにどこにそんな強さを秘めているんだ。






俺は繋いでいた手をぎゅっと握り返す。







「……大丈夫だよ。どんな結果になってもね、私は康人くんが後悔しないプレーをしてくれればと思ってる。

毎日汗だくになって人一倍練習していたのも知ってる。康人くんは自分の…、楽しい野球をすればいいんだよ。

……不安なら…私がとり除いてあげるから」



**もきゅっと手を握り返して俺を見上げる。










闇がいつのまにかすっと消えていた。




ああ、俺はこんなに小さくてもすごい心強い味方がいるんだ。

こんなにも支えられてるんだ。





そう思ったら無性にこのぬくもりが愛しくなって

ぴたっと足を止める







「康人くん?」






俺の手持ちぶさたな左手が愛する人の頬に触れる。



「………**……キス、していい?」





かぁっと赤くなる顔は

こんな暗くなった道でもよく見てとれて




顔を俯かせるのを合図に

彼女の唇に吸い込まれていった。











いつも俺を安心させる言葉を紡ぐ口は

俺の口を通じて中に勇気と自信を注入してくれる













こんなにも愛しい愛しい彼女。


俺の背中をいつも押してくれる大事な人。










頬に触れてた手を離して

彼女の肩に両腕を乗っけて**の頭の後ろで手を組む。

お互い同じ目線で見つめ合い、

額同士をコツンとぶつけた。







「………**、見てて。俺らしいピッチングするから。」


「…うん。ちゃんと見てるよ。試合中は近くにはいれないけど、いつでも私は康人くんの側にいるからね」






いつでもそばに君がいる。




もうこれ以上の言葉はいらない、


俺の欲しい言葉を、

安心させてくれる言葉を、

放つこの口に、また蓋をした。








こんなにも愛しくて、

大事なんだって、

君しかいらないって、





この口から君に流れ込んで伝わればいいのに。



















…大丈夫、

俺の味方が君だけだとしても投げ抜ける。





きっと大丈夫。






また闇がつきまとっても君が導いてくれる。








俺の闇は君によって照らされるんだ。

















月が闇夜を照らしていた。


二人を、


これからの未来を


見守るかのように。







End

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