「雨降りそ……」
教室の窓に両手をつきながらから空を覆う黒い雲を見つめ、ため息をつく。
雨は嫌い。
だって私の心を表しているかのように雲と一緒にやってくるから。
――この間も同じような天気があった。
ここのとこ、空元気で疲れていた私。
周りに心配させないように笑顔を振りまく。
そんなことでしか生きてゆけない。
そんな自分を私は許せない。
心から笑えないのがつらい。
なんとも言えない、
心の闇、
いや、心に鉛を落とされて身動きの取れない気分だった
そんな時に限って激しい雨は降りだす
「傘…忘れちゃったな………」
なんかもうどうでもよくなって激しい水の石が当たる中、
ただぼーっと歩いていた
雨に打たれたかった
涙を流したくても流せないから
雨と一緒に汚いものが流れでればいい
そう思って上を向いた
「ふっ……髪の毛から制服、靴の中までびちゃびちゃ」
自嘲するかのように笑った。
――ぐいっ
一瞬何が起こったかわらなかった
透明のビニール傘をさした知らない男の子が私の右腕を引っ張って近くの雨宿りできるビルの下まで連れてこさせられ
正面になって向かい合ったままじっと私を見つめるから視線を逸らしてしまう。
「………えっと、なんですか?」
沈黙を破ったのは私からだった。
「…風邪ひいちまうだろ。部活のタオルでわりぃけどないよりはマシ」
とスポーツバッグからとりだした白いタオルを私の頭に被せた。
「……ありがとうございます。」
なんなんだろうこの状況。
見ず知らずの人にタオルでがしがし頭拭かれて。
何故だか無性に悔しくてぐっと唇に力を入れて俯く。
「……俺、雨好きなんだ。」
思いがけない一言
「…ひとしきり空が泣いたら、さ、嫌でも笑顔見せなきゃって晴れになるだろ?」
「いつも晴れでも困るんだよな。空も俺らも。空の涙は恵みの涙…だろ?」
何も言えずただ聞いていた。
「………笑顔が辛くて泣いたとしても、きっと何かのためになってるんだ。
…今日はたくさん雨が降ってるから、きっと明日はすごく綺麗な空が見えるぜ。」
ぽんっと私の頭に手を乗っけ、私の髪の水分を吸収したタオルはそのままに
よし終了っ、それやるよと優しい声。
顔をあげると眩しいくらいの笑顔があった。
ちゃんと顔見てなかったから、こんなに格好いい人だと思ってなかった。
少し焼けた肌、
きれいな顔立ち
透き通るような茶色い髪がよく似合ってた。
そのあと彼は何も言わず、私の肩に自分の傘を乗せてあの激しい雨の中走っていった。