「ホ、マ、レくーん!ねぇったらー」


隣でペラッという音を立てて、本をめくる主の腕を掴んで揺らす

さっきから無反応な彼


「大声出さなくても聞こえてる」

「ねぇ、いつ終わるの?」

「わからない」

「…」




久しぶりに会えたのに、図書館でデートなんて…


別にいちゃいちゃしたいわけじゃないけど、もう少しなんかあるよね?


一緒にいられるのは嬉しいけど、かまってくれないのってさみしい…




隣の微動だにしない彼を見つめ、

私は心許なく悲しい気持ちになる。



小さな息を吐き、すっと立ち上がった。



「私ちょっと飲み物買ってくるね。」

「ああ」


私の行動に興味もないみたいに、

本から一回も目を離さない。



なんか、




悲しいを通り越して




悔しい。









自販機にはもちろん

おしるこドリンクなんて置いてない。



12月初め

寒くなってきた空気を身に纏いながら

私はボタンを押す。



「あったかーい…」



私の手の中にあるのは

あったかいミルクティー



ちゃんとあまいものにしたよ?

なんて心の中で問いかける。




ロビーはちょっと寒いけど、

図書室にいると息がつまりそうだった。

だから少しガマン。



何個も連なったひとつの椅子に座り、

足をぷらぷらとして弄ぶ。



「名字さん?」


後ろを振り向くと、

やっぱり崇くん。


にっこり笑いながら近づいてくる。






正直、



逃げたい。







崇くんと一緒にいて、

何度もホマレくんからお仕置きを受けた。

そんなことはされたくない。

けれど、逃げれるはずもなく。



「崇くん、久しぶり。元気?」


差し障りのない会話をする私。


「元気だよ。名字さんも元気そうだね。今日はひとり?」

「ううん、ホマレくんと一緒。私は休憩中なの。もうそろそろ行こうかなって思ってたところ。」
一刻も早くここから抜け出したい!



「そうなの?その缶からまだ湯気出てるけど…?」


うっ…

意外に鋭い。



いつもは空気読めないのにーっ

あ、今も読めてないんだ。


「あっ!僕もう行かなきゃならない!じゃあね、名字さん。」


そう言って

嵐のように去っていった崇くん






ほっと胸を撫で下ろす。



そんなことは束の間。





「**」



後ろから新たな声。


それは怒りを含んだ音。


誰か振り向かなくてもわかる。


でも恐くて振り向けないよ…




頭を鷲掴みにされ、

無理矢理顔の向きを変えられた。



「おまえは飲み物ひとつ買うのに15分もかかるのか?」

「えっ、あ、ほんとだ。」


少し一服してからって思ってたのに。


「しかも崇とまた話してるし」


ビクン!と私の肩が反応する。


「…いい反応だな。」

いやらしく笑う彼の瞳は、

久しぶりにみることのできた色。


何をされるかわかってるくせに、

私の心臓は早鳴りになる。

その目を見れて嬉しい、だなんて


もしかして、

私って、

M?






「おい」


ぐるぐると渦巻くMの世界から

私は引き戻された


「何飲んでるんだ?」

いつの間にか隣に座っている彼

「あ、コレ?ミルクティーだよ。飲む?」


差し出すもおしるこじゃないしな、

と思いつつ渡す。

意外にも彼はその缶に口をつけた。



「…糖分が足りない。飲んでみろ。」



言わんこっちゃない…

と思いながら缶を受けとり一口流し込む



「甘いと思うんだけどなぁ…」


思わずぽろっとこぼした言葉

待ってましたと言わんばかりに


一瞬で口内に侵入する舌。


激しく絡みついて貪るような


長い、長い食事のあと


紡いだ言葉は、




「ほんとだ。甘い…な?」




思わず口に手をあてる。

耳まで熱が籠っているのがわかる。

思い通りの私の反応にふっと笑った。




その瞳に侵食されたら最後。

あなたの瞳がまた近づいてくる。


もうされるがまま。

そして、されたいと思ってしまう自分。




あなたに見つめられていると思いながら

私はゆっくりと目を閉じた。









あまい、あまい、


あなた好みのミルクティー。


どうぞ美味しくいただいちゃって?









end




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