キュッと手に力を込めれば、それに返事をするようにギュッと握り返してくる大きな手。

その繋ぎ方も、今では随分と慣れたと思う。最初は、手を繋ぐことすらも恥ずかしくて。


「…ん?**どうした?」

「んーん!なんでもない!」


一年前を思い出して少しだけ赤くなる。それに気づかれないようにしていたのに、タケトくんは目敏く見つけてズイ、と顔を近づけてきた。

こうなったらもう絶対に引かないって知ってる。


「ちょっ、近いよっ!」

「なーに赤くなってんだよ。**ちゃんやーらしー!」

「なっ!違うってばっ!」

「ははっ!…で?」


ニヤニヤと笑いながら私の顔を覗きこんだタケトくんは、私の腰に手を回して引き寄せる。

恋人繋ぎに慣れても、未だにこれだけは慣れない。さらに赤くなった顔を隠すようにうつむいた。


「べ、別にホントになんでもないもん!」

「そーか?真っ赤になってっけど?」

「それは!」


…タケトくんがこういうことをするからで。

モゴモゴと口を動かす私を見て笑い、チュッと頬にキスをしてまた歩き出した。


「……外なのに」

「オレたちのラブラブっぷりを見せつけてんだからいーだろ?」

「もー…恥ずかしい……」

「ホーント**は慣れねぇよな」

「タケトくんが堂々としすぎなの!」


絶対見られてたよ…と落ち込む私の隣で、タケトくんはそんなこと気にもせず相変わらず私の腰に手を回しながら私のことを笑った。


「んで、今日どうしたい?」

「え?あ…タケトくんは?」

「…**は行きたいとこねぇの?」


そう言ってぐっと私の身体を引き寄せた。

私に行きたいとこはないかとか聞いておきながら、きっとタケトくんは今日の日のためにこっそりプランを立ててくれてるはず。

いつもそうだったから、私は何も心配せずにタケトくんに委ねた。


「ううん、タケトくんといれればどこでもいいよ」

「……」

「?タケトくん?」

「……お前さぁ…いい加減そーゆーの止めろって…心臓にわりぃ…」

「え?」


大きなため息を吐いて片手で顔を隠して項垂れるタケトくんを覗きこんだ。


「ばっ!見るなって!」


真っ赤になった顔を背けて悔しそうにしているタケトくんを見たら、なんだか嬉しくなった。そういう仕草は一年前と変わってない。

ふふっと笑えばガシガシと頭を掻いてまた私を引き寄せる。


「ったく…!誰にでもそーゆーコト言うなよ!?」

「言ってないよ、タケトくんにだけだもん!」

「……当たり前だっつーの!」


ピン!とおでこを弾かれて、少し睨めばチュッと額にキスが降ってきて。


「…楽しみにしとけよ。最高の記念日にしてやるから」

「うん!」


私を見つめるその大好きな優しい笑顔に、繋がれた手をギュッと握り返した。





二人でいることが

それが何よりの幸せ。




end







 

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