良い匂いというものは、その発生源が食べ物でも何でも、人をひきつける。



「ローランサン、香水つけてる?」

「え?」


ふとした瞬間、ローランサンは匂いを纏っている。安心するような、肩の力が抜けるような良い香り。同じ香水がもしもあるのだったら、自分も使ってみたい。戸惑う相方に構わず、腕をとって繁々と見つめた。



「い、イヴェ」

「んー」

「わ…、わ!?」


自分のよりほんの少し小さい、剣だこペンだこだらけの手を目の前に引き寄せて香りを確かめる。するとじんわり伝わってくる熱が急にはねあがった気がして、顔を上げると複雑な表情の相方が震えていた。


「お、」

「お?」

「俺がくさいならくさいってはっきり言え!香水なんかつけてるわけないだろイヴェールの馬鹿っ!!」

「ぅわっ!」



腕を振り払い赤い顔で一気にまくしたてた相方は、僕を突き飛ばして脱走した。不覚にも受け身がとれず、床へ尻餅をつく。痛い、と思うよりローランサンの言ったことが、衝撃重い。
くさい?逆だ、馬鹿野郎。馬鹿って言う奴が馬鹿だって話は本当だな。良い匂いだって褒めてやろうとしたのに。いや、待て。あいつはそもそも香水つけてないと言ってたような。


「……香水、じゃないのか?」


だとしたら、それはローランサン自身が発してるものなのだろうか。
脱走する前のローランサンの熱が体にうつった気がして、僕は手で口元を覆った。




ロラサンの認識。香水→くさい。イヴェの認識。ロラサン→良い香り。な話(?)






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