屋敷が大きければ大きいほど、準備に時間をとられる。時には、僕たち以外との奴らとも組んで、長くて数年、短くて半年の盗みの計画を立てる。すると、時々こういうことが起こるのだ。


見たこともない顔した相方が変な笑顔をして、これまた知らない男と寄り添っていた。いや、相方については何となくわかる。きちんと手入れしてない灰銀が黒に化けていて、造作のひとつとっても普段の姿が信じられないくらい丁寧だ。おそらく、野暮用と称して出かけて行った彼の野暮用が、獲物の屋敷の関係なんだろう。

思い出してみれば次の仕事、ローランサンの役割は、侵入する屋敷へ力仕事を引き受ける雑用係として潜入することだった。潜入する場合、内部の情報を探ったり侵入経路を確保したりすることはもちろん、うまく取り入って屋敷の主人一家に気に入られれば万々歳。使用人同士で流れる噂も、ここでは重要だ。

きっと隣にいる中年の男も、屋敷の者だと思う。昼時のピークを越えて人もまばらな通りを、二人は談笑しつつこちらへ向かって歩いている。

しかし、しかしだ。

男は何故かやたら相方に近いではないか。

すれ違う際、わざと男の肩にぶつかってみた。


「すいません」

「ああいえ、こちらこそ」


後から聞けば、この時の僕の顔は若干恐ろしかったらしい。男は軽く会釈して憤ることもなく、相方の肩を抱いて過ぎ去った。何か釈然としないものを胸の内に抱いてると、僕がずっと行方を追っていたのを見通していたように、相方が振り返って苦笑した。これもまた聞いたところによると、相方は「どうどう」と僕を宥めたつもりだったらしい。もちろん、一発殴ったが今回は避けられた。



「あんまり、好意を持たれすぎると、仕事終わった後の処理が面倒くさいぞ」


その日帰ってきたローランサンにそう言えば、シャワーを浴びて黒を落とした彼は、変な笑顔も落として頷く。


「ああ、あれは大丈夫」

「何処が?」

「男に手を出してみたいけど、中々踏ん切りつかないなーって状態だから。元々男好きなら、もっと触られるから」


疲れた、と言ってあくびしながら事もなげにのたまった相方に、聞くべきことは色々多そう。エプロンをつけて夕食の準備をするローランサンを横目に見つつ、僕はゆっくり、読んでいた本を閉じたのだった。







ローランサン、この後全力で逃げるの巻。






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