「よし。今から第何回目かもよく分からない会議を始めます」

「…次の仕事の作戦会議的な?」

「それは先週から毎日言い争ってるだろ。ちがくて、俗に言う家族会議的なものだって」

「家族……いつ俺たち入籍したっけ」

「馬鹿野郎、家族は比喩だ馬鹿。盗賊の生活会議とかだと締まりないだろうがこの馬鹿め」

「何もそんなに馬鹿馬鹿連呼しなくたってさ…!」

「まあそんなことは脇に沈めて。ちょっと家計簿に相談事が」

「俺の人権が…。て、相談?」

「ローランサン」

「な、何だよ急に。そんな急死に一生な場面に遭遇しました助けて!みたいな顔して」

「これは、緊急事態なんだ」

「お、おう?」

「そうだな、まさに急死に一生かもしれない。それくらいまずい事態が起こってる」

「え、そ、んなに?」

「大問題だ」

「どんな問題だよ」

「……思い出せ去年の夏」

「お前が夏バテで倒れて看病したことなら覚えてる」

「じゃなくて。ほら、去年は夏の最後の方、すごく暑くなっただろ?」

「ああ…そういえば。やっと涼しくなったと思って夏物仕舞った途端に暑くなったもんなー」

「で。それによってさ、今年は出来が良いんだ。例年より」

「例年?出来?良いならなんで大問題?」

「……ワイン」

「へ?」

「ワイン、の出来がすごく良い」

「……なら別にうまい酒が飲めるんだから、喜ぶことじゃ、」

「おまえっ、超馬鹿野郎!喜びたいけど喜べない!よく考えてみろよ、普段お買い得で飲める質の悪いやつも出来が良いんだ、全体的に値上がりするに決まってるだろうが!!くそっ…毎年こつこつワイン貯金して初物買ってたのに…今年はそれじゃ足りないんだよ…!」

「ちょ、イヴェっ、いつもこそこそ大事にしてた豚の貯金箱はそれだったのか!ていうかワイン、え、今年はあんま飲めなくなんの!?」

「…僕の本棚勝手に漁ったな?いや、今は不問にしとくけど。そう、そこで家計簿に相談なんだ」

「……衣服代とか切り詰められるもんは切り詰めないと」

「もちろん。それに加えて僕は今年、絶食に挑戦してみy」

「それは却下!だめ!忘れたのかよ、去年も同じこと言ってた数日後に倒れたんだろーが!!」

「っち」

「舌打ちすんな!!……俺は、イヴェールが心配で言ってるんだよ…また倒れて俺の寿命縮める気?」

「……分かったよ。その代わり、去年の倍仕事入れるぞ」

「…本当だな?それならりょーかい」







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