航イドとコルテスの会話文。 「……青い空、前方に見えるは彼方に沸き立つ白い雲のみ」 「詩人に転職する気にでもなったか。今の職よりそっちの方が似合ってるんじゃないか?面的に」 「黙れこの雑用船長が、誰の判断のせいでこの私が直々に望遠鏡を覗いてると思ってる!」 「嵐の中を回避するどころか敢えて突っ込んでいこうって軽いノリで判断くだしたお前さんのせいだよな。誰がどう見たって」 「あの大波を見てゾクゾクしない奴なんて低脳以下の不能だ」 「それで羅針盤も航海図も流されて、海を操るどころか翻弄されまくってるんならざまぁねえな」 「おや、デッキブラシ片手に持った不能が何ぞ喚いている」 「仕方ないだろ。嵐の後に、海を走れる俺達のお馬さんを放っておけば、たちまちフジツボと海藻の幽霊船の出来上がりだ」 「……そういえば先の嵐の後、繁殖に成功したワカメを、君の机の中に放置したままだったような……まぁいいか。掃除は当然だが、コルテス。船長である君が何も率先してやることはないだろう下の者にしめしがつかんぞこのド低脳が」 「結局お前低脳って言いたいだけ……待て、よくない。先の嵐は一ヶ月以上前だろ、最近妙な臭いがするなと思ってたがお前のせいかイド!」 「机を整理しないのは、君の悪癖の一つだね」 「勝手に俺の部屋の物を物色するのも、相当な悪癖だがな。普通だったら減俸どころか、海に突き落としてぇ所だ。おい、しっかり片付けとけよ」 「ところでコルテス」 「反省のカケラも見えねぇ」 「君が今着ているそのジャケットは、嵐が来る前に洗濯して掛けておいたお気に入りのジャケットかい?」 「、っ、そうだが?」 「流されなくてよかったな!」 「え…あ、ああ、あ!?」 「流石は出港前の恋人にもらったジャケット、余程君は鼻の下伸ばして大切に保管していたのだね。おお、あったあった」 「あいつにはとっくにお前のせいで振られてるわ!それより早く突っ込んだ手をどけろ気持ち悪い!!」 「つれないね、こんな長い付き合いなのに。色恋沙汰の一つも報告してくれないのか。私は悲しいよ」 「無駄にうますぎる泣き(そうな)顔作っても、もう俺には通用しないからな」 「……つまらん、君は年々低脳になってきている」 「お前は段々阿呆になってるけどな…ってイド、お前手に持ってるやつ、」 「君の厳重な保護下にあるポケットに入れておいた航海図だが、何か問題でも?」 「流されたって言ったのはどの口!?」 「この私が、緊急時に備えて最低限のスペアも用意しない低脳だとでも言いたいのかな、船長」 「……っああああお前相変わらず面倒臭い奴だな!羅針盤の方のスペアは!」 「ワカメの奥」 「航海士の、端くれなら、道具を大切に、使えッ!」 了 |