*心なしか流血表現ありなので注意






あかい、あかい。周囲は燃えているのに、身体の末端部分は凍えるように冷たい。周囲を飲みこんでいるのは殺戮の炎で、自分を包み込んでいるのは、



「は、はは…」


無謀にも相手の領域へ深く踏み込んで、一突き、横一閃。
鈍い手応えと生温い感触に、ああこれいつもの黒い大剣だったら確実に殺してたな、と遠い所で無感情に思った。
悲鳴を上げて倒れた男を乱暴に転がし、ぐいと乱暴に顔を拭う。生温い感触が腕に移動して、見ると生温いのもそのはず、床で瀕死の淵を彷徨う男の体内で先程まで巡っていたものだ。赤い、血。


「…!…っ、」


遠い所、そこから誰かの声がする。
今、今そこに戻ってしまったら、多分この身は炎に焼き尽くされてしまうだろう。絶望、悲哀、恐怖の炎に。ごちゃごちゃ渦巻いて、「ユルサナイ」と胸を締め付けるそれは鎖にも似ていて、俺をその遠い所から此処へと引き戻すのだ。

焦げて朽ちてなお、火に身を投じてさえも、廻り続ける風車の丘へ。


「ローランサン!」


腕を掴まれ、頬を叩かれた。それを境に丘が遠ざかる。視界がぶれて揺ら揺ら移ろう夕焼けは、銀色の光で埋め尽くされた。


「やめろ。あんまり大事にさせるな!」

「……イヴェ、」


イヴェール。仕事の相方。銀色の光だと思ったのは、帽子から垂れた一房の髪。覗くのは、相変わらずのオッドアイ。だけど、戦利品を持つ手とは反対の腕が、あかい。


「…おい、サン…?」


がたがたと全身に震えが走る。鎖が、音を立てて俺を引き戻そうとする。

剣を取れ、さもなくば失う。失いたくないのなら、剣を取り、刀身を赤く染め、黒く酸化させろ。

呪いの音、じゃらじゃら。がんがんと頭に響いて、俺はもう一度手に持った獲物を握りなおした。











ここで力尽きたorz
一応、チーズケーキ〜の話の補完?的なもののような…そうでもないような。イヴェール視点は、いつかやります…!

ローランサンの耳にこびりつく「ユルサナイ」は緋色の花からじゃなくて、逃げ出して見殺しにしたという自分で生み出した自責の念から。それを例え生まれ変わっても引きずってる、というのは自分的にありなのですが…\(^o^)/







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